2024年の株主総会(この記事では「定時株主総会」を指します)のシーズンになりました。この記事では、中小企業の株主総会における事前準備のポイントを紹介します。
株主総会の事前準備のポイントは、スケジュールの把握と招集通知の発送です。中小企業においては、株主数も限られるため、書面決議で株主総会の決議を省略したり、オンラインでの開催を検討したりすることも考えられます。
この記事で想定するのは「非公開会社」で、取締役会・監査役設置会社(会計監査人非設置会社)です。非公開会社とは、定款上、発行する株式の全部に譲渡制限を設けている株式会社です。
あわせて読む
中小企業の株主総会
- ●2024 中小企業の株主総会「株主総会の準備は何をすべき?」
- ●2024 中小企業の株主総会 「総会運営の流れを知ろう」
- ●2024 中小企業の株主総会 「開催後の実務にも注意」
- ●2024 中小企業の株主総会「株主総会にまつわるQ&A」(近日公開)
1 株主総会とは
株主総会は、会社における重要事項を決定する機関です。会社の1年間の事業を報告したり、計算書類を承認したりするほか、取締役や監査役などの役員の選任・解任、役員報酬の決定などができます。そのため、株主総会は、法令の定めに従って、毎年一定の時期に必ず開催しなければなりません。
しかし、中小企業の中には、株主が親族や役員だけである会社や株主の数が少ない会社もあり、株主総会の必要性を感じる機会が乏しく、形だけ議事録を作成している会社もあります。
このような場合、ひとたび株主間(親族間や役員間)の関係が悪化すると、経営権を巡って、争いが生じかねません。株主総会が適法に開催されていないことが争点になり、法的紛争に巻き込まれる可能性もあります。
2 株主総会の開催日
株主総会の開催日について、法令上、「○月○日に開催すべき」との定めはありません。しかし、毎年6月下旬に株主総会が集中しています。なぜでしょうか。
これは基準日が関係しています。基準日とは、会社が株主総会において権利を行使できる株主を定める日のことです。そして、次の理由から6月下旬に株主総会が集中しています。
- 基準日は、会社の決算期に合わせて設定されることが多く、決算期=基準日を毎年3月末日に定めている会社が多い
- 株主の権利行使は、基準日から3カ月以内に行使するものとされている
なお、かつてはいわゆる「総会屋」によって株主総会が混乱、延長・長時間化することがあったため、慣行として6月の最終営業日に株主総会を開催することは避けられています。
3 スケジュール例
招集通知の発送期限などの一部の手続は、法令で決められた期限に従って行わなければなりません。一般的な株主総会のスケジュール例は次の通りです(基準日を2024年3月31日としています)。
4 開催場所の決定
株主総会の開催場所は、会社の本店所在地に限らず、自由に決定することができます。ただし、開催場所が過去に開催した株主総会のいずれの場所とも著しく離れている場合、その場所に決定した理由の説明を求められることがあります。このようなときは、例えば、「会場確保の都合で」などと、あらかじめ招集通知に開催場所を変更した理由を記載します。
また、株主が出席しづらい場所があえて選択された場合には、招集手続が著しく不公正であるとして、株主総会の取消事由になる可能性があります。
5 招集通知の発送
取締役会は、株主総会の招集を決定し、定款の定めまたは取締役会の決定に基づいて代表取締役が招集通知を発送しなければなりません。
まず、取締役会では、次に記載する主な事項を決定しなければなりません。株主に、オンラインでの出席・参加を認める場合、その方法や質問・動議の提出などの権利の制限についても決定する必要があります。
- 株主総会の日時および場所
- 株主総会の目的事項(報告事項および決議事項)
- 株主総会に出席しない株主が書面または電磁的方法によって議決権を行使することができるものとするときは、その旨
- 役員などの選任・報酬、定款変更など一定の事項が株主総会の目的事項であるときは、議案の概要
上記を取締役会で決定後、会社は、法令に定められた期限に従って、株主に招集通知を発送しなければなりません。招集通知には上記の事項を記載し、計算書類および事業報告を添付しなければなりません。
招集通知の発送期限は、非公開会社の場合、原則として株主総会の日の1週間前に送付することで足ります。ここでいう「1週間」とは、招集通知の発送日と株主総会の日を含まない、中1週間(中7日)です。
例外として、書面や電磁的方法による議決権の行使を認める場合には、2週間前となりますので、以下の整理で確認しましょう。
書面や電磁的方法による議決権の行使を認めない場合で、かつ、株主全員の同意がある場合、招集通知の発送を省略することができます。株主数が少なかったり、株主が親族・役員だけだったりする場合には、あらかじめ株主全員の同意を得て、招集通知の発送自体を省略することもできます。
6 オンライン株主総会の検討
株主総会にオンラインを取り入れる会社もあります。
しかし、非公開会社では、株主総会をオンラインのみで開催することは認められません。そのため、実際に株主総会の会場を設けた上で、テレビ会議システムなどを利用して、会場と株主との間をつなぐ必要があります。
このようなオンラインを利用する場合、バックアップの通信手段の確保など、当日に通信障害が生じた場合の対策が必要です。この他、議事録作成はオンライン出席の株主についての記載が必要など、リアルの開催とは異なる点があります。
2024 中小企業の株主総会「総会運営の流れを知ろう」も併せてご確認ください。
あわせて読む
中小企業の株主総会
- ●2024 中小企業の株主総会「株主総会の準備は何をすべき?」
- ●2024 中小企業の株主総会 「総会運営の流れを知ろう」
- ●2024 中小企業の株主総会 「開催後の実務にも注意」
- ●2024 中小企業の株主総会「株主総会にまつわるQ&A」(近日公開)
以上
(監修:三浦法律事務所 弁護士 磯田翔)
https://www.miura-partners.com/lawyers/00024/
※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2024年4月22日時点のものであり、将来変更される可能性があります。
※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。
【電子メールでのお問い合わせ先】
inquiry01@jim.jp
(株式会社日本情報マートが、皆様からのお問い合わせを承ります。なお、株式会社日本情報マートの会社概要は、ウェブサイト https://www.jim.jp/company/をご覧ください)
ご回答は平日午前10:00~18:00とさせていただいておりますので、ご了承ください。