令和4年3月24日、近畿大学と徳島大正銀行は「産学連携包括契約」を締結しました。
産学連携・交流を円滑に推進するための組織が近畿大学リエゾンセンター(KLC)です。
「とくぎんサクセスクラブnavi」(とくさくnavi)では、KLCのコーディネーター武田和也さんへのインタビューを3回連載でお届けします。産学連携の『今』、地域企業とのつながり方や未来の可能性に迫ります。
第1回では、近畿大学リエゾンセンターの設立背景や役割、特徴について詳しく伺いました。企業と大学を繋ぐ「架け橋」のリアルな現場をお届けします。
―近畿大学リエゾンセンター(KLC)の設立背景や目的についてお聞かせください。
KLCは2000年2月に設立されました。1971年近畿大学では、「近畿大学公害研究所」を設立し、日本の高度成長期に発生していた健康問題や環境破壊など、数多くの社会問題の研究が行われていました。1981年には「近畿大学環境科学研究所」を設立、そして1998年にTLO法(技術移転促進法)が制定されました。
地域の研究機関や大学が特許化したものを有効活用していこうとなったわけです。それまでは大学が産学連携を行うことはいいイメージを持たれていませんでした。海外は先行して大学で作られた知財を使って商業化し、社会へ還元していく動きが活発にありました。日本でもTLO法の制定により、大学で眠ったままになっている知財を外に出していこう、大学の持っている研究力で企業のお困りごとを解決していこうという機運が高まりました。そして外部からのご相談を受ける機関としてKLCが設立されました。
―「企業と大学をつなぐ」仕組みについてお聞かせください。
まずは企業からお困りごとの連絡を受けます。新聞記事をみた、インターネットで調べた、こんな研究をしているならうちの相談にのってよ、と様々なきっかけでご相談をいただきますね。金融機関からの紹介も、最近とても多くなっています。
そしてKLCに所属しているコーディネーターがお困りごとの内容を見て、このご相談ならあの学部のあの先生だろう、とあたりをつけて面談をしてもらいます。面談がうまくいけば共同研究につながっていく。このような流れで企業と大学をお繋ぎしています。
―まさに企業と大学を繋ぐ「架け橋」の存在ですね。コーディネーターの皆さんの活動や役割についてお聞かせください。
コーディネーターは、企業から相談を受けて企業と大学をお繋ぎした時に教員のサポートをしています。面談中に話のネタになっているデータを調べて提示したり、制度を見せたり、話し合いがスムーズに進むようお手伝いしています。
また、面談がうまくいくと共同研究に進みますが、共同研究の契約もコーディネーターが担当します。企業の契約担当者とやりとりをして契約書をかためていく作業になります。契約書を締結して研究へ繋がった後は、研究そのものは先生と企業が直接やりとりしますが、研究の結果、良いデータが出たので知財を出したい、となった時はまたコーディネーターの出番です。企業の知財担当者とコーディネーターが連携し、特許の中身や、どこの特許事務所に出すのか、また、いつごろ出すのか、などの期限管理も行っています。特許、商標、意匠などを企業と一緒に出願し、管理もコーディネーターが担っているのです。
―コーディネーターの皆さんはどのようなご経歴の方がいらっしゃるんでしょうか。
コーディネーターは企業出身者が多いですね。企業で勤めていて、産学連携分野に興味がわいてKLCに来る方が多いです。企業で知財関連の仕事をしていた方もいます。企業にいたコーディネーターは企業目線で企業側にも立てるのでとてもいいメリットになっています。
私自身は特殊な経歴で、もともとは航空宇宙に関連するレーザー応用分野の研究を行っており、近畿大学で学位を取得しました。博士後期課程を修了後、近大での非常勤、NEDOフェローを経てコーディネーターとなりました。KLC歴は私が一番長いですね。
―多岐にわたるご経歴を持つコーディネーターさん方だからこそ、さまざまなご相談に対応できるんですね。他の大学との違いや、近畿大学ならではの特徴を教えてください。
近畿大学では、中小企業との連携が非常に多いですね。商品化の数も非常に多いです。文部科学省の調査結果でも、令和5年度において受託研究の数が国公私立あわせて8年連続日本一でした。一方で、受託研究の際にもらった研究費の額はそんなに高くありません。ということは一件あたりの費用が少ないんです。近畿大学では中小企業との連携に力を入れているため、研究費の下限を設けていません。研究費は大学の教員の人件費は入っておらず、消耗品代や、学生が動く場合は交通費、学会発表する場合は学会の経費とかかるお金だけになっております。そのため中小企業からも申し込みしやすいと思います。
また、近畿大学は私立では珍しく農学部があるので、農学部の研究を利用した相談も増えています。学部数が多いため、幅広くご相談に対応できるのも強みです。
次回は実際に企業と行われた産学連携の事例を中心に紹介します。
近畿大学産学連携についてのご相談は、お取引のある営業店にお問合せください。または、とくぎんサクセスクラブnaviのお問合せフォームからご連絡ください。
以上(2025年5月作成)
画像:近畿大学リエゾンセンター