書いてあること

  • 主な読者:「会社の未来」「仕事の進め方」など、社員に思いを伝えたい経営者
  • 課題:なかなか社員に思いが伝わらない。オンラインだとなおさら難しい
  • 解決策:名言+自分の言葉で思いを乗せる

1 「名言」に経営者の思いを乗せる

経営者と社員とでは物事の捉え方や視点の高さが大きく違います。経営者が「何度言っても伝わらないな」と感じるのは、そもそもの【考え方の形】が違うからです。それに、今はオンラインでミーティングするのが当たり前なので、「伝える」ことが一層難しくなってきました。

そこでお勧めしたいのが、著名な経営者やアスリートなどの名言を使うことです。著名人の名言はインパクトがありますし、書籍やテレビなどで知られている人物は社員もイメージしやすいからです。ただし、

名言を使うだけでは、逆に薄っぺらになるので、経営者の思いをうまく名言に乗せる

ことが大切です。そのポイントは次の通りです。

  • 「時期」を考慮する
  • 「話題性」を考慮する
  • 具体的なエピソードを添える
  • 経営者の本気を込める

2 「時期」を考慮する

例えば、新年度がスタートするときは、社員がこれから意欲的に仕事に取り組めるよう、前向きな内容にします。経営者が、「新年度のスタートである」「一人ひとりが新たな節目を迎えている」と宣言すれば、社員は身が引き締まることでしょう。

また、「特に誰に伝えたいか」を意識することも一策です。新年度には、新しく会社やチームに加わった社員や立場の変わった社員もいます。こうした新しい環境を迎えた社員に対して改めて経営者の思いを伝え、気持ちを鼓舞してもよいでしょう。

なお、考え方はそれぞれですが、新年度には、多くの社員の心に残るよう、広く一般的に「著名人」として知られている人の名言を選ぶのがよいかもしれません。例えば、松下幸之助氏、本田宗一郎氏、歴史上の人物などがそれに当てはまるでしょう。

【文例:メッセージの冒頭】

  • 新年度のスタートです。皆さんは、どのような年度にしていきたいですか。
  • 今日は特に、新しく管理職になった皆さんにお伝えしたいことがあります。

3 「話題性」を考慮する

「今、話題になっている人」を選ぶのも一策です。話題性ばかりを追うわけではありませんが、より多くの社員に印象付けるには有効かもしれません。例えば、2022年の北京冬季オリンピックで4回転半ジャンプが認定された羽生結弦選手の会見での言葉などは分かりやすいでしょう。

【文例:羽生結弦選手の言葉を使ったメッセージ】
2022年の北京冬季オリンピックで4回転半ジャンプへの挑戦を貫いた羽生結弦選手。順位こそ4位でメダルを逃しましたが、4回転半という記録は認められ、その後の記者会見での発言も大いに注目されたところです。「羽生選手にとって『挑戦』とは何か?」と聞かれ、羽生選手は、「自分だけが特別なわけではなく、皆、生活の中で何かしらの挑戦をしている。それが大きかったり、目に見えることだったりという違い」といったような話をしていました。

日本人は、他人がやっていることを「すごい!」と感じる一方で、自分がやっていることをあまり評価しない傾向にあります。しかし、羽生選手が言うように、私たちは常に何かに挑戦しているのです。そして挑戦は、何も新しいことに取り組むことだけではありません。現状を維持するための挑戦、何かを守るための挑戦もあるのです。皆さん、どうか日々の自分の挑戦に誇りを持ってください。そして、一緒に成長していきましょう!

4 具体的なエピソードを添える

「分かりやすさ」を高めるには、名言に具体的なエピソードを添えるとよいでしょう。自分の友人や家族、尊敬する経営者仲間といった身近な人のエピソードと名言を併せると、より効果的です。

【文例:佐々木常夫氏の名言、具体的なエピソード、提案のあるメッセージ】
私の友人である経営者の話です。彼は今、40代後半ですが、これまで一度も海外に行ったことも、英会話を習ったこともありません。それでも、仕事で外国人向けのイベントを主催し、流ちょうな英語のジョークで皆を笑わせています。

彼は20代の頃から「海外に行く費用は工面できないが、英語は日本でも学べる」と英語を学び始め、それから20年以上、一日も欠かさず独学で勉強し続けています。今では、現地の人と変わらないくらいネイティブな英語を話しているのです。

彼の姿から「良い習慣は才能を超える」(*)という佐々木常夫氏の言葉を思い出します。才能が足りなくても、良い習慣を毎日続けていれば成長し、才能のある人を超えられるという趣旨の言葉ですが、まさに、彼はそれに当てはまると思います。

しかし、私の友人が特別なわけではありません。皆さんも同じです。財務諸表を読む訓練をする、お客様に1件でも多く連絡するなど、毎日続けることで、必ず皆さんの力になります。皆さん、今日から継続して努力することを決めてみてください。

【参考文献】
(*)「ビジネスマンのための論語」(佐々木常夫オフィシャルWEBサイト、2017年1月)

5 経営者の本気を込める

名言を使ったメッセージは効果的ですが、あくまでも「経営者の思い」を分かりやすく社員に伝える表現方法の一つにすぎません。名言をそのまま使うのではなく、経営者が自分なりの解釈を加えて説明するといったように、工夫するのも一策です。

また、言葉や表現などを工夫して思いを強調するのもよいでしょう。その際のポイントは「語り掛ける」ようにすることです。「皆と一緒に」「自分(経営者)も皆と同じように改めて考える」といった内容にすると、経営者の本気度が伝わりやすくなります。結局は、経営者が「どれだけ本気を込められるか」が勝負なのです。

【文例:思いが伝わりやすくなるメッセージの締めの言葉】

  • 私も皆さんと一緒に、新しい挑戦をし続けることを約束します。
  • 会社を変えていくのは皆さん一人ひとりです。一緒に、前に進みましょう。

以上(2022年3月)

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画像:pexels

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