けさは、昔話の「三年寝太郎」について、私が感じていることを話したいと思います。三年寝太郎の話の内容は幾つか説があるようですが、最も知られている話を大まかに言うと、3年間寝続けていた男が、川の流れを変えることで、干害で苦しんでいた村を救った、というものです。
恐らく江戸時代の農村が舞台の話だと思いますが、もし現代に寝太郎のような人物がいたとしたら、皆さんはどのように感じるでしょうか?
万が一我が社に寝太郎のような社員がいた場合、3年も寝続けられる状況にしないでしょう。すぐに結果を出すことが求められているこの時代に、3年かけないと結果が出せないような社員は、なかなか受け入れることができません。
ですが、私はすぐに結果を出すことが求められる今のような時代こそ、寝太郎の話に見習うべき点があるのではないかと思っています。例えば、3年間という長い年月をかけて、一つのことを考え続けた根気です。少し結果が出ないと諦めてしまうことが多い中で、長期的な視野に立って、それだけの情熱と信念をもって取り組むことは大切だと思います。
また、寝太郎は自分の幸せではなく、世の中をより良く変えていくために3年間を費やしたという、公共心です。SDGsが注目され、共生社会を目指さなければならない今こそ、自分の損得だけで物事を判断しない寝太郎のような考え方を見習うべきではないでしょうか。
実は、研究者のような人たちは、ある意味で寝太郎のような長期的な時間軸と公共心をもって取り組んでいるといえます。研究者と寝太郎の唯一といっていい違いは、寝太郎は寝続ける前に、「私は干害で苦しんでいる村人たちのために、解決策を考える時間がほしい」と打ち明けなかった点です。もし寝太郎がクラウドファンディングをしていれば、それなりの資金が集まったのではないでしょうか。
そして、私が何より感じているのは、結果的にかもしれませんが、寝太郎という人間の生き方を受け入れた社会の寛容性の素晴らしさです。今の医学で診断すると、かつては真面目な働き者だった寝太郎が一日中寝ているのは、うつ病を患ったためにそうせざるを得なくなってしまった、という説もあるようです。それはさておき、さまざまな事情で社会に適応することが難しい人は、少なからずいます。そういった人たちを温かい目で支えられる社会になればいいと思いますし、我が社もさまざまな意味で「人に優しい」会社でありたいと思っています。
私は、皆さんに寝太郎になってもらいたいとは思いませんが、長期的な視点で物事を考えること、情熱と信念をもって一つのことを続けること、世の中を良くしたいと考える気持ちなど、見習ってほしいことがたくさんあります。そして私も、少し長い目で皆さんの成長を見守れるような、「人に優しい」経営者でありたいと思います。
以上(2021年12月)
pj17083
画像:Mariko Mitsuda