【ポイント】
- 物事の理解が速く指摘が的確な人は、話を聞く際、「相手の目的」にフォーカスしている
- こちら側の主張をすることに集中しすぎると、「相手の目的」を考えられなくなる
- ビジネスでも「お客様がそれを望んでいるのはなぜか」を考えれば、提案がしやすくなる
先日、起業家の方と話したときのことです。その方は、当社が考えている新しいビジネスについて、10あるうちの1か2を説明しただけで全てを理解し、こちらが気付いていない課題まで指摘してくれました。とても理解が速く、指摘が的確なことに感激した私は、「なぜ、それほどまでに理解が速いのですか。何か訓練をしているのでしょうか」と尋ねてみました。その方は、こう答えました。
「特別なことは何もしていません。強いて言うなら、人の話を聞くときには、その人の『目的』にフォーカスするよう心掛けています。例えば今回は、御社が新しいビジネスをやろうとしている目的は何か、また、私に話をしてくださった目的は何か。その2つを考えたので、おのずと全体像と課題が明らかになったのかもしれません」と。
私は、その方の素晴らしさは、「相手の立場に立って考えようとすること」にあると思います。「何がしたいのか」「何のためか」という、話す相手の目的を考えることは、相手の立場に立って考える際の基本です。ただ、残念ながら皆さんは、相手の立場に立つことが苦手なように思えます。こちら側の主張をすることに集中するあまり、「相手の目的」を考えられていないのかもしれません。
例えば皆さんは、お客様から何か要望をいただいたとき、「その要望に応えられるか」「どのように実践するか」「当社にとって利益があるかどうか」といったことをすぐに考えようとします。それらはもちろん大切ですが、皆さんが最初に明らかにしなければならないのは、「お客様がそれを望んでいるのはなぜか」です。お客様には、必ず「なぜか」ということを問い掛けてください。要望通りのことを実践できなかったとしても、お客様の目的さえ分かっていれば、代替案を提示することができます。もしかしたら、お客様が考えていたものよりも良い方法を提案できるかもしれません。
逆の場合でも同じことがいえます。こちらが相手に要望を伝える、あるいは何かを説明するときには、目的を伝えるように心掛けましょう。そうすれば、相手が考えやすくなるからです。話す側になったときにも、相手の立場に立って、「何を伝えれば相手が理解しやすいか。考えやすいか」という視点が必要です。「相手の目的は何か」を考えれば打開策は見えてきます。
以上(2024年11月更新)
pj16907
画像:Mariko Mitsuda