今朝は管理職の皆さんに集まってもらいました。少々厳しい話となりますが、とても大切なことなので、しっかりと聞いてください。
皆さんは、今の私と同じように、部下の前に立ってお話をする立場です。朝礼などを利用して部下に会社が大切にしている理念や価値観を伝え、実践させることが皆さんの仕事です。しかし、私から見ると、皆さんは朝礼がうまくありません。声のトーンや話すスピードなどプレゼンテーションのテクニックがマズイと言っているわけではありません。皆さんがどこからか“拝借”してきたような表層的な内容を、格好をつけて話していることが問題なのです。
我が社のように、朝礼を習慣にしている会社の管理職は、次の朝礼で何を話そうかと考え、“朝礼のネタ探し”をします。そのためにウェブサイトを見たり、書籍を読んだりするでしょう。
情報のインプットは大切ですが、そこで得られるネタは、管理職が自分の思いを分かりやすく伝えるための“切り口”にすぎません。しかし、管理職の中には、ネタをそのままスピーチの内容にしてしまう人がいます。例えば、年始の朝礼ではえとを話材にすることが多いのですが、一般的にいわれているその干支の年生まれの特徴などを紹介し、最後に「今年も頑張りましょう」で締めくくるだけのパターンです。ウェブサイトの記事を、ほぼそのまま話してしまう管理職もいます。
なぜ、このようになってしまうのか。それは、管理職が部下に伝えたいことを持っていないからです。あるいは、伝えたいことはあるけれど、話す内容に自信が持てないので、借りてきた言葉ばかり並べて格好をつけているというケースもあります。
両方とも、管理職としての役割をもう一度考えてもらわなければなりません。「朝礼ができない管理職」の問題は我が社に限ったことではありませんが、これは皆さんが考えている以上に深刻な問題です。会社が長く続き、大きくなっていく過程で生じる問題の一つは、意図せずに起こってしまう“理念や価値観の希釈”です。起業したてであれば、会社が本当に大切にしている理念や価値観は数人で共有すればよく、それらは議論の中で濃くしていくことができます。
しかし、組織が大きくなると理念や価値観を隅々まで伝えることが難しくなってきます。本来、そうした“理念や価値観の希釈”を抑える役割の一部を担うのは管理職です。にもかかわらず、年始のとても大切な朝礼の場で借りてきた話しかできないようでは、我が社のレベルは低いと言わざるを得ないでしょう。
管理職の皆さん、我が社の理念や価値観をもう一度、確認してください。そして、何度もそしゃくし、皆さんの言葉で部下に伝える努力をしてください。ぎこちなくてもいいのです。大切なのは、スピーチに込められた皆さんの思いです。
以上(2022年5月)
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画像:Mariko Mitsuda