今日は、入社3年目から5年目までの中堅社員の皆さんに集まってもらいました。皆さんは、これから先、我が社を背負って立つ存在です。中には、管理職となって部下を育て、組織を率いていく人もいるでしょう。皆さんは、「管理職予備軍」ともいえるのです。
管理職には、一般社員とは違った意識や働きが求められます。よく、「立場が人を育てる」と言いますが、いざ管理職になってから意識や働きを変えようと思っても、なかなかうまくはいきません。「管理職予備軍」である皆さんには、今のうちから管理職になる準備をしておいてほしいのです。そこで、私はこれから皆さんに、2つの話をします。ぜひ、今のうちから、管理職としての心構えを学んでください。
1つ目の話です。先日、学生時代の友人が初めて本格的な舞台の脚本を書いたので、私は仲間と一緒に見に行きました。舞台の素晴らしさもさることながら、私は一緒に見ていたある仲間の姿に感心したのです。舞台はコメディーだったので、随所に笑いどころがありました。彼は、笑いどころでは真っ先に、とても気持ちの良い明るい声で笑い、素晴らしい演技には惜しみない拍手を送っていました。つられて周りの観客も笑い、手をたたくようになり、会場は大いに盛り上がったのです。舞台後、脚本家の友人や役者が、「笑い声で場が盛り上がってやりやすかった。本当にありがとう」と口々に言っていたのが印象的でした。
私の仲間の楽しみ方は、「役者たちが演じやすい場をつくった」のでしょう。管理職にも、同じことが求められます。明るく前向きな場をつくるのは管理職の仕事です。管理職が前向きな言動でハツラツと仕事をしていれば、組織はポジティブになるでしょう。逆に後ろ向きで文句ばかり言っていれば、ネガティブな組織になってしまいます。管理職は、言動一つにも、「場をつくる」という責任があることを忘れてはなりません。
ただし、いつも、単に盛り上げていればいいというわけではありません。組織には、時に、立ち止まって考えることや足元を固めることも必要です。ここでお伝えしたいのが2つ目の話、世界的に有名なF1レーサーが言っていたことです。
彼いわく、「レーサーにとって一番大切なのはブレーキを踏む判断力」なのだそうです。その力があるからこそ、レーサーは、自分を信じて、時速何百キロものスピードを出すことができます。組織にも、ブレーキは必要です。ブレーキを踏むことができればこそ、組織は思い切って前に進めるのです。管理職は、必要とあらば率先して組織のブレーキにならなければなりません。そのためには、目の前の見えるところだけを見るのではなく、広くて高い視点を持つ努力が必要です。
中堅社員の皆さん、今日、私は管理職として大切な心構えを、2つお話ししました。皆さんが、一日も早く管理職となり、一緒に我が社をつくっていく未来を、私は心から待っています
以上(2019年9月)
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画像:Mariko Mitsuda