けさは、「自分には、これといった強みや特徴がない」と思い悩んでいる人にとって、ヒントになるような話をしたいと思います。
皆さんには何度も話していますが、自分の強みを持つことは、ビジネスパーソンとして非常に重要なことです。社内のみならず、社外でも強みになるようなスキルがあれば、会社にとっても本人にとっても存在価値を高めることにつながります。それと同時に、社外に対しても強みになるようなものをつくることは、簡単ではないのも事実です。
皆さんの中には、米国のプロ野球選手である加藤豪将(ごうすけ)さんをご存じの方もいると思います。米国生まれで主に米国で育ちましたが、ご両親とも日本人です。高校卒業後、日本のプロ野球を経ずに、米国でマイナー契約を結んでプロ野球選手になりました。そして2022年4月、プロ9年目にしてメジャーリーグで初ヒットを放ちました。
プロ選手になった後の加藤さんは、外国人選手と比べて体格やパワーで劣ることもあり、なかなかメジャーリーグに昇格できませんでした。下部のマイナーリーグは、バスで十何時間も移動し、粗末な食べ物しか食べられないような過酷な生活だったといいます。
それでも何とかメジャーリーグに昇格しようと、加藤さんが選んだ道が、何でもこなせるユーティリティープレーヤーになることでした。
そのために加藤さんは、内外野のあらゆるポジションを守り、チームの戦略や、控えも含めた全ての打順で求められるバッティングができるように努力しました。本人いわく、「カメレオンみたい」な選手を目指したのです。
このようなタイプは、監督にとって非常に使い勝手の良い選手です。例えば、けが人が出た場合など、その穴を埋めるのにはもってこいです。加藤さんはマイナー生活での経験から、いつ指名されても活躍できるよう、身体的、精神的に準備を整える術を学んだといいます。しかも加藤さんは、常に笑顔を絶やさず、そのような隙間を埋める作業を喜んで引き受けています。メジャー初のヒットを放った際にチームの皆が祝福したのは、そのような加藤さんのキャラクターも大きかったのだろうと思います。
会社にとっても、加藤さんのような、組織の隙間を埋めてくれるような人は貴重な存在です。営業で大きな取引を獲得したり、新たなプロジェクトを企画したりするだけで会社が回っているわけではありません。忙しい人をサポートしたり、急に休みが必要になった人の穴を埋めたり、といった作業も会社にとって不可欠です。オフィスの汚れた場所に気付いてすぐに掃除することも、組織の隙間を埋めるような作業といえるでしょう。そのような積み重ねによって、組織にとって欠かせない存在になれます。それは、もはやその人の強みや特長だといえるでしょう。
以上(2022年7月)
pj17112
画像:Mariko Mitsuda