新型コロナウイルス感染症の影響で、この1~2年のうちに、10年分のデジタル化が進んだといわれます。この変化がさらに続くことは間違いなく、私たちは次の世界を見据えて進化しなければなりません。私たちが進化するために必要なこととして、「進化圧」を感じ、「ゼロリスク」信仰と決別することについてお話しします。

さて、いまやデジタル化の代名詞となっているのが、DX(デジタルトランスフォーメーション)です。しかし、DXは抽象的で分かりにくい面があり、多くの会社はペーパーレス化という、身近で具体的な課題をDXとして取り組んでいます。

こうした話のときに出てくるのが、「ペーパーレスはDXではない!」「ペーパーレス化の先の目的は何だ?」と批評する人です。こうした人は、ペーパーレス化をばかにしたり、非協力的な姿勢を示したりして組織の足を引っ張りますが、当の本人もDXを定義できているわけではなく、「DXなのだから、何か壮大なことをしなければならない」と漠然と考えているだけです。

当社はどうでしょうか。今から10年ほど前、当社はコスト削減の一環として、まさにペーパーレス化を掲げました。しかし、ちまちまとした取り組みは定着せず、全く結果が出ませんでした。

しかし今は、リモートワークを進めた結果、95%以上のペーパーレス化が達成されています。リモートワークを実施する際、ペーパーレス化はほとんど意識していませんでした。

そう、私たちは働き方を変えただけです。「新しい働き方をしなければ生き残れない」という強烈な危機感にかられて、行動を起こしただけのことなのです。

生物学の世界には、「進化圧」という言葉があります。簡単にいうと、「生物は環境に適合しなければ生き残れない。だから進化せよという圧力」のことです。当社がリモートワークを掲げたのはコロナ前でしたが、コロナによって一気に進化圧が強まりました。急激な変化は、捉え方によっては変わろうとする者の背中を押すのです。

生物は自然界の変化に対応するために体の色を変えたり、木に登れるようになったりします。当社に置き換えると、私たちはリモートワークにフィットした組織に進化しました。しかし、まだまだ道半ばです。DXは私たちが生き残る可能性の一つにすぎず、私たちには強い進化圧がかかり続けているのです。

「なるほど、では行動しよう!」と思うわけですが、そのときに出てくるのが「ゼロリスク」信仰です。リスクがゼロにならないと決められない、動けないという、日本人にありがちな思考ですが、リスクはゼロになりません。自然界ならとっくに捕食者に食べられてしまう姿勢です。

コロナやDXは今の話題であり、数カ月後は別のものになっているかもしれません。ただ一ついえるのは、リスクをとって変わらなければ、新しい可能性も生まれないということです。

以上(2021年11月)

pj17076
画像:Mariko Mitsuda

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