最近、ニュースなどで「配属ガチャ」という言葉をよく耳にします。入社した際に自分の希望の勤務地や職種に配属されないことを、ソーシャルゲームの「ガチャ」の当たり外れになぞらえ、「配属ガチャ」と呼ぶのだそうです。希望のポジションに就けなかった新入社員が、入社してすぐに会社を辞め、転職してしまうという話、皆さんも聞いたことがあるでしょう。
私は、「転職」そのものについては、特にネガティブなイメージを持っていません。今どき、入社から定年まで1つの会社に勤め続ける人というのはまれですし、自分がやりたいことを追求し続けるポジティブな姿勢は、むしろ評価します。また、本来あってはならないことですが、入社前に説明したものと明らかに違う労働条件を強いるブラック企業などもありますから、そういった場合に自分を守る手段として、転職が必要なケースもあるでしょう。
一方で、自分の希望のポジションに就けないことを「ガチャ」と捉える風潮については、いささか疑問があります。ソーシャルゲームのガチャの景品には、当たりと外れがあり、当たりの景品が欲しい人は、それが出るまでガチャを回し続けます。これを「配属ガチャ」の場合に置き換えると、自分の希望のポジションに就けるまで転職活動を続けるという意味になります。私が疑問を感じるのはそこです。この配属ガチャ、はたして何回回せば当たりが出るのでしょうか?
ソーシャルゲームなら、スマホゲーム上のボタンをクリックするだけで数分のうちに何回でもチャレンジすることが可能です。しかし、転職活動はそうはいきません。会社を探したり、面接を受けたりするだけでも相当の時間がかかります。何度も会社を変え、入社と退職を繰り返していたら、あっという間に数カ月、場合によっては数年という時間を消費してしまうでしょう。そして、転職活動をしている間、その人は職場で仕事をしているわけではないので、ビジネスパーソンとしての成長は止まってしまいます。
だったら、仮に希望ではないポジションに配属されたとしても、まずはそこで踏ん張って、希望のポジションに就ける機会を待つというのも一つの手ではないでしょうか。自分の希望と違っても、職場で積んだ経験は無駄にはなりませんし、実績を重ねていけば、会社が自分の希望を聞き入れてくれる機会も出てくるはずです。
繰り返しになりますが、私は「転職」そのものを否定するつもりはありません。ただ、皆さんによく考えてほしいのは、
自分の夢や目標に向かって「近道」をしているつもりが、実は「遠回り」になってはいないか
ということです。転職に限った話ではありません。最近はネットで調べればすぐに自分の求める情報が見つかることもあり、近道をしたがる人が多いですが、時には「石の上にも三年」と思って辛抱してみるのも大事ではないでしょうか。
以上(2024年6月作成)
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画像:Mariko Mitsuda