先日、ベンチャー企業の経営者や起業家が、自分たちのビジネスについてプレゼンを行うイベントを見学してきました。このイベントはマッチングや資金調達が主な目的で、大企業の新規事業担当者やベンチャーキャピタリストなど、数多くの人たちがプレゼンを聴きに来ていました。
会場は熱気にあふれ、プレゼンターも聴き手も本気度が高く、聴いていて胸が躍る素晴らしいイベントでした。私が特に印象に残ったのは、多くのプレゼンターが、「チームメンバーの紹介」に時間を割いていたことです。
持ち時間は1人5分間で、決して長い時間ではありませんでした。しかし、その短い時間の中で、「具体的にどのようなことができ、どのような活動をしているメンバーがいる会社なのか」ということがよく分かるプレゼンが多かったのです。中には、今後の事業展望よりも、チームメンバーのことを熱く語って終わる人もいたくらいです。
プレゼン後の交流会で、私はプレゼンターの1人に、なぜ、チームメンバーの紹介にこれほど時間を割くのかを尋ねてみました。すると彼はこう答えたのです。
「正直なことを言えば、今後、外部環境などによって事業内容は変わっていくかもしれない。それでもいいと思っている。それよりも、何ができるメンバーがいて、それぞれが日ごろどのような活動をしているか。会社の実力を知ってもらうには、それを伝えることのほうが大切だ」
私はこれを聞いて、最近、仕事で出会った海外のビジネスパーソンたちのことを思い出しました。人にもよるのでしょうが、彼らは、自己紹介をするときに、会社名を先に名乗ることはほとんどありませんでした。まず自分の名前を、次に「私はこのようなことができます」「私が現在やっていることはこれです」と自己紹介をするのです。そのため、私は一人ひとりを、会社名ではなく、「何ができる人か」で覚えました。
日本人の場合は、逆です。最初に会社名を名乗り、お互いに会社名を覚えます。具体的に何ができる人かは、よく分からないままということが少なくありません。私も、海外の方に会社名を名乗ったら、すぐに「あなたは何ができるのか」「何を実現しているのか」と質問をされました。
皆さんは、どうでしょうか。社外の人に、どのように自己紹介をしていますか。「自分はこれができる」と明確に言うことができるでしょうか。
そう言えるようにするためには、得意分野を持ち、それを突き詰めることが必要です。しかも、社内だけでなく、社外でも通用するくらいでなければなりません。
私は皆さん一人ひとりに、「自分の得意分野はこれだ」と言えるものを持ってもらいたいと思っています。「能力の肩書」といってもいいでしょう。皆さん、新年度を迎えた今こそ、「自分は何ができるのか」を改めて自分に問いかけてみてください。
以上(2019年4月)
pj16954
画像:Mariko Mitsuda