最近は人間同士、企業同士、どこを見ても競争、勝ち残りが話題になっています。確かに我々は厳しい環境を生き延びていくためには競争に勝ち残っていくしかありません。しかし、自分だけ、自社だけがよいと考えてしまうと、大切なことを見逃してしまうことがあります。そこで今日は皆さんに、自分以外の人に対する配慮の大切さを知ってほしいと思います。
皆さんは「情けは人のためならず」ということわざを知っているでしょう。情け、とは同情や愛情、言い換えれば「哀れみや慈しみの気持ち」という意味があります。この意味を「他人に情けをかけてやることは、甘やかすことになるので、その人のためにならない」と思っていたとしたら、それは間違いです。
このことわざの意味は、「他人に情けをかけることは、その人のためばかりではなくて、自分のためでもある」というものです。つまり、他人に対する行いは巡り巡っていずれ自分にも返ってくるのだから、日ごろから積極的に他人に対する思いやりや親切心を大切にしましょう、ということです。
昨今の日本人はやたらとせっかちです。私も含めて多くの人がそうですが、何事もすぐに結果が出なければ納得できません。「いつになるか分からないけど、そのうちいいことがあるだろう」なんて、そんな悠長なことには耐えられません。当てにならない「情け」なんてものにかかわっている暇はないのです。
しかし、他人への「情け」は、自分が成功のチャンスをつかんだり、成長したりするきっかけになることがあります。
私がお付き合いしている大学の先生は、友人や先輩から「大学では自分の研究だけやっていればよい」との忠告を受けたものの、他の教室から研究実験の依頼が多くありました。頼りにしてくる人々の顔を見ると、どうしてもやってあげたくなり、普通の人の何倍もの仕事をしていました。その結果、先生は依頼ごとに、それに必要となる専門知識を習得しました。先生は他の教室の研究に協力したことが、その後の自分自身の何百という研究成果につながったといいます。
このように、人が困っているときに手助けをしてあげれば、その恩恵が自分へと返ってきます。つまり、親身になって周りの人の相談にのったり、頼ってくるさまざまな人と交流したりするうちに、自分のビジネスに対する気付きとなったり、新しいアイデアや、新たな商談へつながったりするなど、結果として自分のためになるのです。
皆さんも、皆さん自身のために、今日から「情け」をかけてみてください。周囲から感謝される上、自分も成長できます。
難しく考える必要はありません。他人にとって難しくても、自分なら簡単にできることから始めてみるとよいでしょう。「私ができることであれば、お手伝いします」と言うだけでよいのです。
以上(2022年8月)
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画像:Mariko Mitsuda