皆さんは、マニュアルをそっくりそのまま真似したことがありますか。皆さんの中に「マニュアルなんて大して役に立たない」と考えている人がいるなら、その考えは改めて欲しいと思います。
私は、マニュアルやお手本といったものはとても重要だと思っています。もし、皆さんが何かを習得しようとしているならば、マニュアルやお手本をすべて暗記し、そっくりそのまま真似できるようになってください。マニュアルやお手本は物事の基本を押さえ、そして解説しているものです。だから、これらを覚え、真似できれば、基本を身に付けることができます。
「学ぶ」という言葉の語源は「まねる」だといわれています。例えば、書道を習得するには、誰でも、お手本を忠実に書き写すことから始めます。噺家は師匠の噺を聞いて、それを見て聞いて覚え、自分のものとします。将棋は最善とされる手順や駒組みである定跡を覚え、その定跡通り指し進めることを繰り返します。剣道・柔道などの武道をはじめ、野球・サッカーなどのスポーツは、基本の動きができるようになるまで繰り返し練習します。このように早く上達するコツは、上級者の形や考え、動きを真似ることです。
この段階では、「なぜ、そうするのか」を分からなくてもよいのです。形を真似る、話し方・身振り・手振りを真似る、指し手を真似る、動きを真似ることができれば、その理由を分からなくても、上達できるからです。サッカーが上手になりたい子供が、有名サッカー選手の真似をするのは、実は理にかなっているのです。
この「真似る」という行為は、本当に奥が深いのです。先にマニュアルの話をしましたが、マニュアルはできる人の行為を、文書化したものと考えてください。マニュアルを正確に真似るだけで、皆さんのビジネススキルが上達するのです。
皆さんが、仕事ができるビジネスパーソンになりたいのであれば、モデルとなる人物を見つけて、真似をしてください。身近にモデルとなる人物がいなければ、尊敬する人物の書籍を読み、その人物の考え方や物事への取り組み姿勢を真似てください。
身近なところ、例えば、上司や先輩にモデルとなる人物がいたら、とても幸せなことです。「仕事ができるようになりたいのです。挨拶の仕方から、仕事に対する姿勢、コミュニケーションの方法などすべてを教えていただけますか。教えはすべて受け入れます」とお願いしてみましょう。間違いなく、その上司や先輩はあなたのことを可愛がってくれます。はじめのうちは、何のためにそうするか、どうしてそのように考えるのかは分からなくてよいのです。上司や先輩を真似ているうちに、上司や先輩の言うことをすべて聞いているうちに、いずれその意味が分かってきます。
こうして仕事に対する考え方や時間の使い方などすべてをそっくりそのまま真似てみると、1年後、自分自身がビジネスパーソンとして成長していることに気付くでしょう。そして、1年前には分からなかった「なぜ、そうするのか」が分かるようになり、謎が解けるのです。
以上(2023年5月)
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画像:Mariko Mitsuda