先日、後輩の○○さんと一緒に大事な取引先の上役の方を訪問する機会がありました。大事な取引先であり、いつもお会いしている担当者よりも上席の方ですので、私はとても緊張して取引先に向かっていました。
そのとき、ふと○○さんを見ると、緊張のあまり顔面蒼白(そうはく)になっていたのです。それを見て私は「しまった!」と思いました。私が緊張している姿を見せたら、後輩の○○さんはもっと緊張してしまうということを、すっかり忘れていたのです。○○さんを気遣うことができなかった自分が情けなく、○○さんに申し訳ない気持ちになりました。そして、私が新人の頃に立てた目標のことを思い出し、さらに反省しました。
私は新人の頃、ろくに仕事もできず、会社の戦力になっていないことを自覚していました。そこで、何か会社の役に立ちたいと私なりに考えて出した結論が、「仕事はできなくても、笑顔だけは絶やさない」ことだったのです。
私の新人時代も会社の業績は厳しく、上司や先輩たちは超人のように働いていました。私に構う余裕なんてなさそうなのに、いつも私には笑顔で接してくれました。私は最も親しかった××先輩に、「どうしていつも笑顔でいられるんですか?」と聞いたことがあります。そのときの××先輩の答えは、「笑っていても、怒っていても一緒だから」でした。私は、目からウロコが落ちたような気分になりました。
「笑っていても、怒っていても、今の厳しい状況が変わるわけではない。だったら笑っているほうが、みんなで次こそ結果を出そうと前向きな気持ちになれる」ということを理解したのです。
それ以来、私はせめて先輩たちの態度だけでも学び、笑顔を絶やさないようにすることを目標に立てたのでした。先輩たちの気持ちが和むように、笑いをとるような努力もしました。そしてその目標は、今でも私の中で変わっていないはずでした。にもかかわらず、いざ先輩の立場になってみたら、後輩と一緒にいる、しかも取引先の訪問という大事なところで笑顔を絶やしてしまったのです。
この経験から、私は笑顔を絶やさないことは、年次が上がっていくにつれて、ますます大事になると痛感しました。立場が上になり、会社全体への影響力が増すほど、自分の表情ひとつで会社の雰囲気を変えてしまう存在になるわけですから。
今、会社が大変な時期だということは、皆さんも感じていると思います。こんなときこそ、私は笑顔を絶やさないようにしようと、改めて誓います。作り笑い、空元気、痩せ我慢、なんと言われても構いません。私の笑顔で、社内の誰かが少しでも前向きな気持ちになれる可能性があるのなら、私が笑顔を絶やさないことに意味はあると思います。時にはあまりの忙しさや理不尽なことに、笑顔を絶やしてしまうことがあるかもしれません。そんなときには皆さん、ぜひ私に「笑え!」というサインを笑顔で送ってください。
以上(2021年9月)
pj17070
画像:Mariko Mitsuda