今朝は、アフターコロナに勝ち抜くための働き方についてお話しします。私が考えるキーワードは「代替性」ですが、「代替の利かない人材になってほしい」という、よく言われる論調とは少し違います。とても大事なことなので、しっかり聞いてください。
代替性について考える上では、セミナーと講演の違いが参考になります。私の知人に、自らセミナー講師や講演家として活躍する一方で、コンサルタントとして、他のセミナー講師に、セミナーの構成の組み立て方や話し方などを教えている人がいます。以前、その知人と話をしていたとき、セミナーと講演の違いは、「再現性と属人性の違いである」という結論に至りました。
セミナーとは、内容を正しく相手に伝え、理解してもらうためのものです。大切なのは、分かりやすい構成と正しく伝える技術です。これらを徹底し、誰がセミナー講師になったとしても同じ結果が出せるようにすることが理想です。つまり、セミナー講師は代替が利くほうがよいのです。
一方、講演とは、受講者に考えるきっかけを与えるためのものです。大切なのは、受講者の共感を得ることであり、共感は講演家のキャラクターなどから生まれます。受講者は、その講演家の話を聞きたいわけで、極端にいえば、話の内容がそれほど良くなくても、「その講演家」の言葉であれば共感できます。つまり、講演家は代替が利かない存在といえます。
この話だと、代替の利くセミナー講師より、代替の利かない講演家のほうが格上に思えます。しかし、企業経営では別の考え方が必要です。
例えるなら、私が行うトップセールスは講演です。私の立場とキャラクターによって実現しているもので、他人にはまねができないからです。私に限らず、組織には講演家のような存在も必要ですが、技能の横展開が難しい以上、企業全体の成長幅は限定的です。そのため企業経営では、1人が10の仕事をこなす体制から、10人がそれぞれ1の仕事をこなせる体制に移行することを重視します。そして、1の仕事を2に増やし、10人を20人にすることで成長していくのです。
つまり、皆さんにセミナー講師のようになってもらい、再現性の高い業務をこなしてほしいのです。そのためには担当者の代替性が不可欠であり、これに気付いている一部の企業は、改めてマニュアル作成を進めています。このマニュアルがしっかりしているからこそ、代替が利きます。
リモートワークだと個人プレーが増えるため、個人の能力にフォーカスされがちです。しかし、企業が今重視するのはチームプレーです。アフターコロナで生き残るのは、代替の利かない人材よりも、「代替を作れる人」です。また同時に、アフターコロナで淘汰されるのは、能力の低い人以上に、代替を作れない人です。代替を作れば、今の業務の引き継ぎが容易となり、レベルのより高い業務にも取り組みやすくなるのです。
以上(2020年10月)
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画像:Mariko Mitsuda