先日、息子の柔道の試合を応援しに出かけました。試合前の数週間は特に練習に力が入っていたようで、頑張っているのを知っていたものですから、私も勝利を期待していました。しかし、結果は惜しくも引き分けでした。帰宅した息子に声をかけると、「あれだけ練習したのだから、試合に勝てるだろうと思っていたのに悔しい」と言います。私はこの言葉を聞いて、彼は「何のために練習しているのか」を自覚していなかったのではないかと思いました。

練習とは何のためにやるのでしょうか? 当然、試合に勝つためです。しかし、それを忘れてしまうと、「たくさん練習したから」と、練習の量だけに満足してしまい、練習の質や効果について目をやるのを忘れてしまいがちになります。

たくさん練習するのはもちろんよいことです。しかし、それはあくまでも自分の実力が向上し、成果を試合で生かせることが大前提となります。毎日のメニューがたとえハードであっても、結果を出すという本質を忘れた練習は、「練習のための練習」でしかないのです。

この、「練習のための練習」をしてしまい、思うような結果が得られないといったことは、スポーツの試合だけでなく、ビジネスでも似たようなことが言えるのではないでしょうか。

例えば、皆さんは仕事の中でさまざまな商品の開発や販売に携わっています。その中で、皆さんはそれぞれが助け合いながらさまざまな仕事をしていると思います。しかし、いま皆さんが進めているその仕事は、最終的に何を目的にしていることなのか、あるいは自分の仕事が次の担当者、次の工程に渡ったとき、どのように生かされるのか、それを皆さんはきちんと理解できていますか? そういう点をきちんと理解できていなければ、たとえ時間をかけて一生懸命やった仕事であったとしても、的が外れてしまい思った通りの成果は出ないかもしれません。これは、ビジネスでいえば「練習のための練習」に過ぎないのではないでしょうか。

ビジネスの上で「試合で結果を出すための練習」をするためには二つのコツがあると思います。一つは、「実際に起こり得る状況を想定して、準備を怠らない」ということ、そして、もう一つは、「何のためにいまの仕事をしているのか、常に目的意識を持つ」ことです。

自分がいま進めている仕事は誰のために、何のためにしていることなのか、まずはそれを考えてみてください。例えば商品の販売計画を立てるのであれば、「誰にその商品を購入してもらい、どういうシーンで使ってもらいたいのか」、営業資料の作成ならば、「誰をキーパーソンとみなして、何をアピールするのか」をイメージしてみてください。

具体的なイメージを描いて、目的を持って仕事をする。そうすれば誰のために、何のためにいまの仕事をしているのかはおのずと分かるでしょう。これこそが試合で勝つ、つまりお客様から支持されるための有意義な仕事をする秘訣だと思います。

以上(2022年8月)

op16540
画像:Mariko Mitsuda

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