【ポイント】
- ナイチンゲールは、戦争における病院の劣悪な環境を訴えるため、統計学の知識を使った
- 彼女は「死亡者数という客観的な根拠」を「グラフという分かりやすい形」で示した
- 正しいだけでは人は動かない。「相手に納得してもらうための工夫」が不可欠
おはようございます。今日は、フローレンス・ナイチンゲールの話をしたいと思います。ナイチンゲールと聞くと、多くの方は「看護の母」というイメージを持たれるかもしれません。実際、彼女は19世紀のイギリスで、看護という仕事を人々に尊敬される職業へと変えた先駆者です。
しかし、彼女のすごさは、それだけではありません。実は彼女は、「統計」の力で多くの兵士を救った人物でもあるのです。ナイチンゲールが活躍したクリミア戦争では、多くのイギリス軍兵士が命を落としましたが、その主な原因は戦傷ではなく、病院の劣悪な環境下で発生する感染症でした。上流階級の家庭に生まれ、統計学の知識があったナイチンゲールは、戦死者・傷病者に関する多くのデータを分析し、「病院の衛生状態の改善」が必須であることを本国に訴えたのです。
なかでも画期的だったのが、本国への報告の際、当時としては珍しかった「グラフ」を用いたことです。ナイチンゲール自身は統計に強くても、国会議員や役人はそうではありません。だから、彼女は初心者にも分かりやすいよう、1カ月ごとの死亡者数をその原因ごとに色分けして円グラフにしたのです。その結果、多くの人が「病院の衛生状態の改善」が必須であることを認識し、抜本的な感染症対策が実施されました。そして、40%以上あった兵士の死亡率は数%台まで下がったのです。
ナイチンゲールは、看護という仕事において、自分が兵士を救うために何をできるのかを真剣に考え、行動しました。それだけでも尊いことですが、1人の力でできることには限界があります。彼女が病院の在り方を根本から変えるには、多くの人々の協力が必要でした。だから、彼女は「死亡者数という客観的な根拠」を、「グラフという分かりやすい形」で示すことで人々を納得させ、協力を取り付けたのです。
皆さんも社内外で話をする際、「こうするのが正しいのに、なんで伝わらないんだ」とモヤモヤすることがあるかもしれませんが、仮に皆さんの意見が正しいとしても、それだけでは人は動きません。大切なのは「相手に納得してもらうための工夫」です。ナイチンゲールのように常に人に寄り添う姿勢を忘れず、頑張っていきましょう。
以上(2025年10月作成)
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画像:Mariko Mitsuda