先日、経営者仲間で食事をしたときに、話題になった質問があります。その内容は、「あなたが経営者ならば、A事業とB事業のどちらを選択しますか?」というものです。A事業は「社会的な意義が大きいが、もうからない事業」、B事業は「社会的な意義はないが、もうかる事業」です。皆さんの答えはどのようなものでしょうか。
この質問は、Google社が相手の視野の広さや柔軟性を知るために使うことがあるそうです。正解があるわけではありませんが、人によって答えに大きな違いが生じます。
ちなみに、私の答えは「A事業でもうかるように工夫する」というものでした。まず私の信条として、社会的に意義のない事業はやりたくありません。それに、A事業が本当に社会的に意義のあるものならば、いずれは世間に受け入れられる可能性が高いと思います。「もうからない」というのは、既存の参入企業を想定した情報かもしれませんが、そうであるならば、むしろビジネスチャンスが大きいと私は思うのです。
同じ類いの質問は他にもあります。例えば、「中小企業は大きな市場を狙うべきか? それとも、いわゆるニッチ市場を狙うべきか?」というのもその類いです。これらの質問で共通しているのは、絶対的な正解がなく、前提条件次第で有利な回答に変わることです。こうした質問を受けたとき、私が最も情けないと感じるのは、「前提条件が分からないから答えられない」という回答です。
このように回答する人は、いつまでも前提条件の提示を求め、結局、自分の答えを言えないものです。しかし、ビジネスは不確定要素だらけで、完全に前提条件が分かることはありません。
冒頭の質問は、いわゆる経営判断を求めるものです。では、私が何をもって意思決定したかといえば、最終的には自分の情熱なのです。もちろん市場調査はするでしょうし、これまでの経験も生かされるでしょう。しかし、リアルのビジネスではどの選択にも一長一短があることがほとんどで、99対1のように、分かりやすい差がつくことはまれです。となると、最後は自分の情熱で選択するしかないのです。言葉を変えれば、「どちらを『正解』にしたいか」を自分で決めるということなのです。この正解とは、皆さんの信念や夢に沿ったビジネスということになります。
皆さん、「こっちを正解にしたい!」という思いを持って活動してください。そのためには、世の中の大きなうねりを感じ、自分がビジネスの主人公になることです。試しに、A4用紙の中央に「自分」を書き、周囲に皆さんの仕事や業界の動きを書き込んでみてください。頭の中が整理され、重要なことは自然と大きく書くでしょう。そのたった1枚の図の中に、皆さんの仕事の喜びや苦しみが凝縮されています。それをじっくり見れば、「あぁ、自分がやりたいことはこれだ!」とおぼろげにでも分かってくるはずであり、それが皆さんの判断基準となるのです。
以上(2019年8月)
pj16969
画像:Mariko Mitsuda