「自分の意見を主張する」。ここ数年のうちに、多くのビジネスパーソンに求められるようになった姿勢です。「主張」とは、自分の意見を相手に訴えることです。ここでいう意見は、「理想」と言い換えられる、ビジネスに対する皆さんの熱い思いです。そうした思いがぶつかり合うエネルギーはすがすがしく、その当事者になることはとても楽しいものです。ですので、私は皆さんにぜひ、主張してほしいと思っています。

一方で、多くのビジネスパーソンは正しく主張することができません。それは自分の意見を持っていないからですが、その背景には、これまで自分の意見を持つことを明示的に求められなかったことがあるでしょう。つまり、意見を持って主張するという発想がないわけです。

ただ、これまで朝礼の場で何度も話しているように、状況は変わりました。業績好調な企業では、「出るくいを歓迎する」文化を育んでおり、我が社もそのような組織を目指しています。自分の意見に完璧を求める必要はありません。人と話したり、本を読んだりする中で変わっていくからです。ですので、皆さん、まずは新年度に向けて、ビジネスにおける自分の存在意義を考えてください。

ここで皆さんにアドバイスですが、焦って正しくない主張をするのはやめたほうがよいです。後ろ向きの主張や、「意見なきポーズの主張」は周囲を不快にし、結果として皆さんから人が離れ、孤立してしまうことになるからです。

正しくない主張を、私は「逃亡」「怠惰」「迎合」の3つに分類しています。

「逃亡」とは、例えば「自分には意見があるが、言っても何も変わらないので言いません」と宣言するような人です。この宣言をもって主張しているつもりでしょうが、意見を言わないのなら、何ら主張していないのと同じです。

「怠惰」とは、上司や顧客からの依頼を面倒に思い、自分が楽をするために「やらない方法を主張する」ことです。言うまでもありませんが、こうした主張の意図は透けて見えるので、すぐに周囲の人から相手にされなくなります。

「迎合」とは、いわゆる「フリーライダー」で、「声の大きい人に乗っかって、自分の主張にすり替える」ことです。こうした人は、風見鶏のように意見が変わるので、相手が頭のいい人なら、自身の主張を通すために利用されるだけです。

これらの主張に遭遇すると、私は本当に嫌な気分になります。ぎこちなくてもいいので、真っすぐに自分の意見をぶつけてください。これに勝るものはないのです。また、主張し合うことは、これまでとはレベルの違う「熱いコミュニケーション」です。会社と社員の関係がドライになったといわれて久しいですが、明らかにその流れとは逆行することになるでしょう。しかし私は、この会社の未来について皆さんと主張し合い、議論したいと心から願っています。ここにいる皆さん、その準備はできていますか?

以上(2021年2月)

pj17041
画像:Mariko Mitsuda

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