来年のえとは「卯(う)」、つまりうさぎです。そこで、今日はうさぎにまつわる話を紹介します。
皆さんは子どもの頃、イソップ物語の「うさぎとかめ」を読んだことがあると思います。亀と競走をすることになったうさぎが、自分の足の速さにうぬぼれて途中で居眠りをし、その間に亀に追い抜かれて負けてしまうストーリーです。今さら説明する必要もないぐらい有名な話ですが、実はこの物語に続きがあるのをご存じでしょうか。1971年に作家の斎藤隆介(さいとうりゅうすけ)氏が書いた「まけうさぎ」という童話です。
ストーリーはこうです。亀との競走に負けたうさぎは、仲間のうさぎたちからバカにされ、故郷を追い出されてしまいます。しかし、ひょんなことから、おおかみが故郷の子うさぎを狙っていると知ったうさぎは、これを名誉挽回のチャンスと考え、仲間たちに「自分がおおかみを倒す」と宣言します。1匹でおおかみの元に向かったうさぎは、おおかみに「子うさぎを連れてくるが、あなたの顔を見ると怖がるだろうから後ろを向いていてほしい」と頼み、おおかみが背中を向けている間に崖から突き落とすことに成功します。おおかみを倒したうさぎは、故郷に戻ることができ、仲間たちから英雄としてたたえられたそうです。
「うさぎとかめ」とは全くテイストの違う話で少し戸惑いますが、2つの作品を読んでみると、うさぎが戦う姿勢の違いが分かります。
うさぎは亀との競走では油断をして負けましたが、おおかみに挑む際は慎重に作戦を立てて、目的を達成しました。うさぎがおおかみに対して油断しなかった理由は単純で、相手が一歩間違えば自分を食べてしまう恐れのある強敵だからです。そして、おおかみを倒したうさぎは、亀との競走では見せず、恐らく仲間のうさぎたちも知らなかったであろう、度胸と知恵を証明しました。
ここから、私たちの仕事に置き換えて考えてみます。皆さんは、それぞれ仕事において自分の得意分野を持っていると思います。頼もしいことですが、長い間同じ仕事を続けていると、どこかで油断が生まれてくるものです。もちろん、「うさぎとかめ」の話を教訓として、得意な仕事でも油断せずに進めてほしいのですが、単に自分に言い聞かせるだけでは、なかなか効果が出ないという人もいるでしょう。
そんなときは、自分から環境を変えてみてください。あえて難しい仕事にチャレンジし、全力を尽くして成功を目指すのです。自分の実力を大きく飛躍させる機会になりますし、良い緊張感が生まれ、普段の仕事に対する姿勢も変わるでしょう。「もし、チャレンジが失敗したら」などと考える必要はありません。皆さんが諦めない限り、たとえ失敗したとしても「まけうさぎ」の話のように名誉挽回のチャンスはやってきます。今年はうさぎのように大きく跳ねる、躍動の年にしてください。皆さんのチャレンジに期待しています。
以上(2022年11月)
pj17129
画像:Mariko Mitsuda