おはようございます。今日は、約300万年前に起きたとされる「アメリカ大陸間大交差」という現象の話から始めたいと思います。
元来、北米大陸と南米大陸は別々の大陸の一部でした。それが分離して単独の大陸となり、約300万年前に陸続きになりました。こうして、2つの大陸の動物たちが互いに行き来できるようになった結果、北米大陸出身の動物は多くが生き残り、生存領域を広げる動物もいた一方、南米大陸出身の動物の多くは絶滅したとみられています。
2つの大陸の動物たちの運命を分けたのは、それまでの生存競争の質の違いでした。北米大陸はユーラシア大陸とつながっていた時期が長く、外来の強敵との生存競争を繰り広げる中で進化し、競争力を高めてきました。
一方の南米大陸は孤立している時期が長かったため、北米大陸ほどの激しい生存競争はありませんでした。その差が、陸続きになったときに明確に現れたのです。
話は現代に移りますが、人類を襲った新型コロナウイルスは、久しく動物界の頂点に立っている人類に対して、生存競争を挑んできた強敵だと見ることもできます。ある生物が繁栄していると、それを捕食したり、寄生したりする生物が現れるのは、当然の現象なのです。
これに対して人類は、ワクチンや特効薬の開発の他、「3密」の回避など生活スタイルを変化させることで、強敵に打ち勝とうとしています。
進化した強敵に打ち勝つために自分たちも進化することなどを「共進化(きょうしんか)」といいます。人類は、新型コロナウイルスに打ち勝つために、共進化をしている最中なのです。
広い意味での共進化は、実は私たちも日々実践している身近なものです。ライバルとの切磋琢磨(せっさたくま)や、課題の克服と言い換えれば分かりやすいでしょう。同業他社との競争で、我が社は新商品や新サービスを開発し、新たな販路を開拓しています。同業他社が新基軸を打ち出せば、それを研究して取り入れることもしています。
皆さん一人ひとりも、同じように共進化をしてきたはずです。同僚や、同業他社の同じ部門に優秀な社員がいれば、彼らのやり方を見習い、彼らを超えられるように努力をしてきたでしょう。業務上、足りない知識や技術があれば、人から聞いたり本を読んだりして補ってきたはずです。
これからの皆さんに私が期待するのは、自ら積極的に進化して、同僚たちの共進化を促すことです。同僚や同業他社に合わせて共進化するだけで満足せず、自分が社内や業界内の生存競争の質を高める、という気概を持ってください。
経済の地殻変動が激しい今の時代、他の大陸と陸続きになる、つまり他業種や他地域、新興企業などとの競合が急に始まっても不思議ではありません。生存競争の質を高めておけば、新たな強敵に打ち勝ち、生存領域を広げることもできます。皆さんの一層の奮起に期待します。
以上(2022年1月)
op17020
画像:Mariko Mitsuda