私は日ごろから皆さんに、書籍を読んで知識を蓄える、外部の人間に会って知見を広げるなど、「勉強」を欠かさないよう伝えています。しかし、残念ながら、現状ではこれが十分にできている社員はほとんどいません。

皆さんの多くは、私から注意を受ければそのときは積極的に勉強しようとしますが、その姿勢は長続きしません。それは皆さんの中に、「業務が忙しいから、勉強にまで手が回らない……」「難しい勉強は苦手だ……」といった思いや考えがあるからでしょう。しかし、私に言わせると、勉強はとても楽しいものであり、勉強が続かない人はそこに気付いていないのです。そこで、今日は「勉強が楽しくなるヒント」について話したいと思います。

皆さんは、土佐藩出身の幕末の志士、坂本龍馬をご存じでしょうか。当時、険悪だとされていた薩摩藩と長州藩の仲を取り持って「薩長同盟」を成立させ、倒幕のきっかけをつくった人物です。この他にも、議会による政治運営など新しい政治構想についてまとめた「船中八策」を起草するなど、先進的な考えを持った聡明(そうめい)な人物というイメージがあります。

ただ、こうしたイメージとは裏腹に、子供の頃の龍馬は、実は落ちこぼれだったといわれています。12歳で漢学の塾に入学したものの、勉強嫌いであまりに出来が悪かったため、すぐに退塾させられたという説があります。

一方、剣術が得意だった龍馬は、14歳で入門した道場で腕を上げ、19歳のときに土佐藩から剣術修行のための江戸遊学の許可を得ます。しかし、江戸を訪れて間もなく、ペリー率いる黒船の来航を目の当たりにし、外国の軍事力に強い関心を持つようになります。龍馬は、兵学者・佐久間象山などに学んで外国に関する知見を広げ続けます。そして、28歳のときに幕臣・勝海舟の「外国に負けない強い海軍をつくる」という考えに感銘を受けて彼の弟子となり、歴史の表舞台へと飛び出していきます。

子供の頃は勉強嫌いだった龍馬が、外国という知らない世界について、積極的に学ぼうとした理由は何だったのか。考え方はさまざまですが、私は龍馬が得意とした剣術が関係しているように思います。龍馬は卓越した強さを持っていたものの、江戸で見た黒船は剣術では到底太刀打ちできない存在でした。剣術に打ち込み、強さを追求し続けてきた龍馬だからこそ、黒船の強さに人一倍魅了され、それが外国について学びたいという思いへと変わっていったのではないかと思います。

ですから勉強が苦手という皆さんは、まず自分の得意分野を極めることを考えてください。もしかしたら、その先に別の世界への入り口が待っているかもしれません。たとえ自分が知らない世界でも、それが自分の得意分野の延長線上に広がっている世界であれば、学びたいという思いは自然と湧き上がってくるはずです。

以上(2020年11月)

pj17028
画像:Mariko Mitsuda

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