皆さんは、タイトルを見て面白そうと思って買った本や、おいしそうな名前だったので注文したメニューが、期待はずれであったという経験はありませんか。これは、目立つキャッチコピーに目を奪われて、内容をしっかりと確認しなかったことが原因です。
プライベートの話であれば良い経験の一つですが、ビジネスの場で同じ失敗をしてはいけません。外側だけを一瞥(いちべつ)して、内容をしっかりと確認しなければ、本質を捉(とら)えきれずに大きな過ちを招いてしまうことがあります。
今日は印象にとらわれずに物事の本質を見抜くためのポイントについて話をします。例えば、薄味の料理に味の濃いタレを一滴垂らしたときのことを想像してください。その料理はそのタレの味になります。また、淡い色のスーツに目が覚めるような赤色のネクタイを締めたときを想像してください。赤いネクタイは非常に目立ち、会う人に強烈な印象を与えます。このように、味や色の濃いものは、それがわずかな量であったとしても人の興味や注意をひきつけ、全体を印象付けるほどの影響力を持ちます。
このことは私たちのビジネスの世界でも同じです。例えば、真新しい情報や、画期的とされる新製品は私たちの目を引き寄せ、強烈な印象を与えてくれますが、一方でその強烈な印象は、その情報が確かなものであるのか、その製品が本当に利用価値があるものなのかどうか、を判断する目を曇らせてしまいます。私たち人間は、どうしても真新しいもの、刺激の強いもの、色の濃いものに注目する性質があります。
つまり、私たちは、印象の強さに意識を奪われて、物事の本質を見ていないのです。
確かに、目や耳に飛び込んでくるものを見るな、聞くな、気にするなというのは無理な話です。手品などはこのような人間の習性をうまく利用しています。手品であれば素直に騙(だま)されて楽しめますが、ビジネスの場ではそうはいきません。
そこで、まず自分が見ているものは物事の最も目立つ部分であるということ、そしてそれは物事の一部分にすぎないのだと自覚してください。その上で、物事を多角的に見るように努力してみましょう。
例えば、取引先との商談の場に際して、あらかじめ取引先の業績を調べておく、業界全体の動向や取引先の競合先についても調べておく、というようにです。商品パンフレットでも、裏から見たり、小さな文字から読んでみたり、色の薄い部分にあえて注目してみるのもよいでしょう。また、モノであれば前からだけでなく後ろ側、裏側、真上、斜めなどいつもと異なる角度から見てみましょう。インターネットで検索するときも、検索結果の後ろの方のページから見たり、いつもと違う検索エンジンを使ってみましょう。そうすれば、今まで見えなかったことが、次々と見えるようになってくるはずです。
本質を見抜くのは簡単ではありません。ビジネスで本質を見抜きたければ、前後左右、表裏から見るのはもちろん、近くから見る、遠くから見る、時間をおいてもう一度見る、そして、複数の人の意見をきくということも必要です。今日から試してください。
以上(2023年1月)
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画像:Mariko Mitsuda