【ポイント】

  • 夏目漱石の小説の主人公・三四郎は、都会に翻弄されつつ、自分なりに考え、行動した
  • ビジネスに絶対の正解はない。失敗を恐れて行動しないよりはしたほうがいい
  • ただ、思考停止に陥ってはいけない。考えて行動するからこそ、失敗を次に活かせる

今日は、夏目漱石の小説「三四郎」についてお話しします。この作品は、明治時代の終わりごろ、九州から上京した青年・三四郎が、東京の洗練された空気に戸惑いながらも、さまざまな人々との出会いを通して、少しずつ自分の世界を広げていく物語です。

この物語のキーパーソンになるのが三四郎と同年代の女性・美禰子(みねこ)です。彼女は東京で育った良家の女性で、三四郎は彼女に引かれていきます。印象的なのが、彼女が三四郎に向けて言った「ストレイ・シープ(迷える子)」という言葉。上京してきた三四郎には、「母のいる故郷の世界」「学問を極めようとする人たちの集まる、やや浮世離れした大学の世界」「美禰子が暮らす華やかな都会の世界」という3つの世界ができていて、彼はその世界の中で自分の立ち位置を決められずにさまよう、ストレイ・シープだったのです。

しかし、自分の考えや信念をしっかり持てないながらも、自分なりに考えて行動を起こそうとする三四郎は次第に成長し、最終的に美禰子に自分の思いを告白します。残念ながら、美禰子はすでに別の男性と婚約が決まっていて、三四郎と結ばれることはなかったのですが、私は自分なりの勇気を出した三四郎がとても好きです。

今日、皆さんにこの作品を紹介したのは、「明確な答えが見つからなくても、何か行動を起こしてみよう」というメッセージを伝えたかったからです。最近は「失敗したくない」と考えるあまり、何かに挑戦することが苦手な人が増えているように思います。ですが、ビジネスに絶対の正解などというものはありません。失敗を恐れて行動しないよりは、行動して失敗して、それを次の成功の糧にするほうがずっと素晴らしいことではないでしょうか。

ただ、同時に大切なのは「思考停止に陥らないこと」です。何も考えずに行動するのはただの愚か者です。自分が今、どんな状況に置かれていて、その上でどう行動したいのか。熟慮した上で行動を起こすから、失敗したとしても次に活かすことができるのです。考えることからも、行動することからも逃げず、大いに悩み、そして行動するストレイ・シープになってください。

以上(2025年7月作成)

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画像:Mariko Mitsuda