日々仕事をしていると、急ぎの仕事を抱えて目まぐるしく動かなければならないときと、比較的落ち着いているときがあると思います。忙しいときには、まず目の前の仕事を片付けることに全力を尽くさなければならないことは言うまでもありません。さて、今日は、「忙中閑あり」といったときの心構えについてお話ししたいと思います。
中国の「春秋左氏伝(しゅんじゅうさしでん)」という書物に「安(あん)に居(い)て危(あや)うきを思う」という言葉があります。
中国の戦国時代に「晋(しん)」という国がありました。晋の王・悼公(とうこう)には配下に魏絳(ぎこう)という有能な武将がいました。あるとき、王が、この武将に他国との戦後講和を取りまとめた労をねぎらって、褒美として楽器を受け取らせようとしました。ところが、武将はこれを辞退します。その際に、武将が王に言ったことが、この「安(あん)に居(い)て危(あや)うきを思う」という言葉です。王は、戦争も終わって平和な時期に「宴を催して楽しんでほしい」という気持ちで楽器を贈ろうとしたのでしょう。しかし、武将は「平和な時期にこそ、将来の危機に備えて対策を講ずるべきである」と、王に意見を申し述べたのです。王は武将の姿勢に大いに感嘆し、さらに彼への信頼を深めました。
当たり前の話ですが、私たちの仕事も、いつも「平常時」であることはあり得ません。
たとえ、今日がいつもと比べて余裕のある日であっても、忙しい時期も必ずきますし、何かトラブルがあれば対応に追われることになります。
そのような「危うき」ときをうまく乗り切ることができるかどうかの鍵は、まさに「安に居る」ときにあるのです。
ここで、皆さんに質問があります。皆さんは「危うき」ときへの対策は万全でしょうか。仕事をするうえで「危うき」場面はいくつも考えられます。
例えば、「誰かがインフルエンザなど急な病気などで離脱した場合のバックアップ体制はできていますか」「パソコンが起動しない場合の対応は万全ですか」「現場で事故や災害が起こった場合の対応方法を講じていますか」「取引先の経営状態が悪化したことが分かっても急に困ることのないよう、普段から与信管理をきっちり行っていますか」「地震などの大規模災害への備えは大丈夫ですか」。
そういった「危うき」ときのための対策は、社員全員で共有されていなければなりません。
また、本当に「危うき」事態になってからでは、対策を考えている余裕はありません。平常時にこそ、いざというときの対策を考えておかなければなりません。
全社的な「危うき」への備えは、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)という言葉で称されるようですが、これは私の責任で対応します。皆さんには、自分自身の足元の「危うき」への備えをお願いします。
以上(2023年2月)
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画像:Mariko Mitsuda