「何か新しいことにチャレンジする場合、皆さんはどのように考えるでしょうか?」
「ポジティブに取り組む!」という人がいれば、「ネガティブになってしまう……」という人もいるでしょう。少し意地悪な問い方でしたが、この質問だけでは、皆さんは考えを決めることはできないはずです。なぜなら、この段階では、何にチャレンジするのかが全く分からないからです。
そして、ここで気付いてほしい大事なポイントがあります。
まず「ポジティブに取り組む!」と考えた人は、本当にそう思っていますか。周囲から「ポジティブに考えなさい」と言われ続けて、そうしなければならないと無理をしていませんか。
ポジティブに考えることで前向きになり、活気が出るのはよいことです。しかし、ビジネスにおいては実現可能性も考えなければなりません。もしかすると、これからチャレンジしようとしていることは、ほとんど成功の見込みがないものかもしれません。そうしたビジネスを、単純にポジティブに力強く進めるのは危険です。
次に、「ネガティブになってしまう……」と考えた人は、自分を褒めてください。こう考えた人は、周囲から「後ろ向きだ」と言われ続けて、自分が嫌になっているかもしれません。しかしビジネスでは、何にチャレンジするのか分からない状況で、気持ちだけを無理やりポジティブにする、いわば“えせポジティブ”よりもよいのです。
ポジティブとネガティブは二項対立のようにいわれますが、ビジネスではそのようなことはありません。局面によってポジティブな考え方とネガティブな考え方を使い分けることが大事です。そして、勝機を見つけ、ここぞというときに前向きに明るく進めることが、“本物のポジティブ”なのです。
京セラの創業者である稲盛和夫氏の言葉に「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」というものがあります。人はできない理由を探すことが得意です。しかし、それだけを考えていたら、何も新しいことにチャレンジできません。そのため、アイデアを出すときは楽観的、つまり「やればできる。何とかなるさ」とポジティブに考えるようにするのです。
ただし、このままでは成功確率の低い見切り発車になってしまうので、計画段階では悲観的、つまりネガティブな考えに立ち、難所の見極めと回避策の立案が必要になるのです。こうして計画ができたら、あとは楽しみながらポジティブに仕事をすればよいということになります。
我が社には、ポジティブな一部の人と、ネガティブな多くの人がいます。どちらがよいということではなく、大切なのは局面に応じたポジティブとネガティブのバランスなのです。今、我が社は次の事業を模索しています。今の時点でリスクは何らありません。ぜひ、ポジティブに考え、楽しみながら次のビジネスを見つけましょう。
以上(2021年8月)
op16857
画像:Mariko Mitsuda