おはようございます。突然ですが、今日は「正義と悪」というテーマについてお話ししたいと思います。といっても、決して壮大な話ではありません。今日のテーマの題材は、日本人なら誰でも知っている昔話「桃太郎」。この桃太郎が正義なのか、悪なのかについて、皆さんと一緒に考えてみたいのです。

「いきなり何を言い出すんだ」と思った人がほとんどでしょう。皆さんがご存じの桃太郎は、桃から生まれた男の子が、悪さを繰り返す鬼を退治するため、鬼ヶ島に乗り込む物語。誰もが桃太郎を正義のヒーローだと信じて疑わないでしょう。

しかし、この一般的に知られるイメージと全く違う桃太郎を書いた人がいます。それが、「羅生門」や「蜘蛛の糸」などで有名な小説家、芥川龍之介氏です。芥川氏が書いた桃太郎は、一言で言うとかなりの悪党です。

芥川氏の物語では、鬼ヶ島の鬼たちは平和を愛する優しい種族で、人間たちに対して何も悪さをしていません。にもかかわらず、桃太郎は犬、猿、きじを引き連れて鬼ヶ島に乗り込み、鬼たちに乱暴をした揚げ句、彼らの財宝を奪い取ってしまうのです。しかも、鬼退治に出発した理由も彼なりの主義や正義感によるものではなく、ただおじいさんやおばあさんの仕事を手伝うのが嫌で、故郷から逃げ出したかったからというネガティブなもの。昔話のほうの桃太郎と比べると、あまりに救いようがなく、がっかりしてしまいます。

芥川氏がこの物語を通じて伝えたかったメッセージ、それは恐らく「私たちが正義と信じているものが、もしかしたら実は悪かもしれない」という警告ではないかと思います。皆さんもビジネスで、自分が正しいと信じてやったことで、かえって周囲に迷惑を掛けてしまった経験はないでしょうか。どのような局面でも、常に「本当にこれは正しいことなのか?」と疑う癖を付けておかないと、独善的な人間になってしまいます。

一方で、私はもう1つ皆さんにお伝えしたいメッセージがあります。それは、「何が正しくて、何が良いことなのかは、結局、自分で決めるしかない」ということです。芥川氏の桃太郎は、昔話の桃太郎に対する「実はこうだったかもしれない」というアンチテーゼではありますが、結局のところ本当の桃太郎が正義だったのか悪だったのかは、昔話を通してしか判断できません。ビジネスも同じで、限られた情報の中で、自分の責任で正しいと思うことを選択するしかないのです。

「本当にこれは正しいのか?」と、一歩立ち止まって考える視点を持ちつつ、その上で「自分はこれが正しい」と思う道を突き進む。皆さんにはそんなビジネスパーソンであってほしいと思います。私は、芥川氏の書いた悪党の桃太郎も1つの解釈としては面白いと思いますが、やはり昔話のほうを支持します。いつの時代も、桃太郎には子どもたちに夢を与える正義のヒーローであってほしいからです。

以上(2022年4月)

pj17097
画像:Mariko Mitsuda

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