複数の仕事を同時に進めるとき、しばしば課題となるのが優先順位の付け方です。皆さんに、なぜ優先順位を決められないかを聞くと、「そもそもどれが重要な仕事なのかを判断できない」などの意見が出てきます。しかし、私から言わせると、これは単なる言い訳です。
ここで、優先順位付けと共通する部分が多い、片付けを例に考えてみましょう。皆さんは、片付けコンサルタントの近藤麻理恵さんを知っていますか。彼女の片付け術の特徴は「残すものを選ぶ」という考え方です。
片付けといえば捨てることに目が行きがちですが、近藤さんは「ときめくものだけを残すこと」を勧めています。ときめくというのは、その服を着ると自信が持てるなど、前向きな気持ちになれることを指します。ときめくものを残すことで、自分のモチベーションが上がるというのです。
また、片付けの最中には、ときめくのか、そうではないのか、迷うものも出てきます。その際に重要になるのが、片付けのゴールです。「夜7時、キッチンで、家族全員が協力して、夕食を準備する生活を送る」など、ゴールを具体的にイメージすることで、それを実現するために何を片付けるべきなのかが明確になります。
近藤さんの片付け術を実践した人は、自分がときめくものや、求める生活が明確になることで、不要なものを買わなくなり、再び散らかってしまうという事態を防げると感じるようです。
片付けと仕事はそのまま比較できませんし、仕事の優先順位付けの基準は「ときめくものだけを残すこと」とは違い、状況によってさまざまな判断があり得ます。しかし、皆さんは優先順位を決める基準をどれだけ意識して、日々の仕事に取り組んでいるでしょうか。
例えば、仕事においては、最も収益につながる、最も時間がかかるなどの基準がありますが、これらは過去の経験を基に判断することになります。つまり、優先順位を正しく付けられないのは、これらの経験を積み重ねていないからです。仕事のゴールを考えて、それに向かって最もよい結果が得られるようにという視点ではなく、「目先にあるので」「やりやすいから」という理由で仕事に取り組み、根拠ある行動を避けているのです。
「過去の経験にとらわれず、感じたままに行動する」ことも、時には大切です。ただし、基準となる過去の経験が何もない状態ならば、どれくらい新しいのか、どれくらいリスクがあるのかを測ることができず、無謀な挑戦になるだけです。
正しい優先順位付けは全ての社員に必要ですが、特に管理職が間違えた優先順位で指示を出せば、部下はムダな動きをします。加えて、目先の仕事や、やりやすい仕事を優先するということは、管理職としての責任や人件費に見合わない仕事を優先することになります。管理職の皆さん、正しい優先順位を付けてチームを率い、会社に貢献する働きをしてください。
以上(2019年3月)
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画像:Mariko Mitsuda