先日、私は、長年の大切なお客様から、「先週の日曜日、電車の中でお見かけしましたよ。混んでいたのでご挨拶もできず、大変失礼しました」と言われました。
それを聞いて私は、とても心配になりました。先週の日曜日、私はどのような格好をしていただろうか、電車の中でだらしのない姿勢で座っていなかっただろうか。お客様は「混んでいたので」と言ってくださいましたが、実は私が険しい顔をしていたので、声を掛けてはいけないと思ってしまったのではないか。そうしたことが頭をよぎり、大げさではなく、肝を冷やす思いでした。
中学校教師をしている私の友人は、よく、「生徒や父母がどこで見ているか分からないから、たとえ家の近所だろうとも、誰かに見られて恥ずかしい言動は絶対にしないように気を付けている」と言っています。つまりそれは、「公人である」という意識を持って行動しているということだと思います。お客様から「お見かけしましたよ」と言われたことで、私も、改めて自分自身を戒めようと心に誓いました。
このことは、皆さんにも当てはまります。特に「公人」の意識を持ってほしいのは、管理職です。管理職の日ごろの言動は、部下に見られているからです。例えば、お客様からの難しい要望に管理職が感情的になって「面倒だ」「やりたくない」と言うのを聞けば、部下はその仕事をネガティブに捉えます。やりがいを感じるはずがありません。
逆に、管理職が「言ってもらえてよかった。これは我が社がステップアップするチャンスだ!」と言うのを聞けば、部下は、前向きに取り組むべき大切な仕事だと感じるでしょう。
管理職の皆さん、日ごろの言動において「部下に見られている」ことを意識していますか。そうでない人は、今日からすぐに改めましょう。
とはいえ、自分の行動を改めたり戒めたりするのは簡単なことではありません。そこで、今から善光寺の元住職が作ったとされる「つもり違い十カ条」をお伝えします。自分自身を振り返り、見直すために必要なことばかりなので、管理職の皆さんは「自分はこうした『つもり違い』をしている」と思って、謙虚な気持ちで聞いてください。
- ・高いつもりで、低いのが教養
- ・低いつもりで、高いのが気位
- ・深いつもりで、浅いのが知識
- ・浅いつもりで、深いのが欲望
- ・厚いつもりで、薄いのが人情
- ・薄いつもりで、厚いのが面の皮
- ・強いつもりで、弱いのが根性
- ・弱いつもりで、強いのが自我
- ・多いつもりで、少ないのが分別
- ・少ないつもりで、多いのが無駄
「公人」である管理職の皆さんには、私から、もう一カ条、付け足しておきましょう。「軽いつもりで、重いのがあなたの言動」です。このことを忘れないでください。
以上(2021年10月)
op16897
画像:Mariko Mitsuda