先日、私は「交渉」をテーマにした社外勉強会に参加してきました。そこで得た気付きを、ぜひ、皆さんと共有したいと思います。
今回は、「交渉とは、相手にとって悪くなく、自分にとって願ってもないほどの交渉結果を引き出すことである」といった基本的な考え方を学んだ上で、交渉を実践するというものでした。
他の参加者とペアを組み、それぞれが「時計のコレクター」と「コレクターが初めて訪れた老舗の時計店」のどちらかの役になりきって、価格や商品数、納期などを交渉するのです。コレクター側と時計店側とで持っている情報が違うなど、さまざまな前提条件がある中で行う、なかなかタフな交渉ロールプレイングでした。
結果から言えば、私の組は交渉決裂です。この交渉では、「初めて会ったという設定の相手と、いかに信頼関係を築けるか」がポイントの一つでしたが、そこがうまくいきませんでした。時計店役の相手は、コレクターである私を、「とにかく自分に有利なほうへ持っていこうとしている」と感じ、どうしても信頼できなかったそうです。
また、私たちの交渉を見ていた周りからも、「時計店側を言いくるめようとしているように見えた。言い方や態度を変えたほうがよい」というフィードバックをもらってしまいました。日ごろのビジネスと同じように、私は互いにウィンウィンになる方法を本気で模索しているつもりだったので、正直言って少しショックでした。
時と場合、相手、ビジネスの状況などにもよりますが、交渉はやはりお互いに相手への信頼がなければうまくいきません。この勉強会では、「交渉事で、私が人からどのように見られるか」を改めて認識させられました。
立場が上がると、どうしても、誰かから自分の言動を叱ったり注意したりしてもらえる機会が減ります。時にそれは、本人からすれば、とても不安なことでもあります。
今回参加した勉強会で、私は他の参加者から率直に叱ってもらうことができ、とても良かったと思っています。自分で自分の至らなさに気付くのが理想ですが、現実はなかなかそうはいきません。人から言われて初めて気付くこともあるのです。
私はこうした機会を、今後もつくっていくつもりです。特に、立場が上の管理職の皆さんも、ぜひ、自分の立場に関係のない環境に身を置き、「叱ってもらえる機会」をつくってみてください。
叱られたり、自分の至らなさを指摘されたりするのは、確かに気分の良いものではないでしょう。プライドを傷つけられたと感じるかもしれません。しかし、幾つになっても、人生は勉強です。「自分以外の人は皆、先生である」くらいに考え、周りに教えを請う謙虚な気持ちを忘れてはなりません。立場が上の者ほど、「叱られる機会」を自らつくり、成長し続けようとする姿勢が必要です。それを持てることこそが、「上に立つ者」の誇りだと私は考えます。
以上(2022年4月)
op16927
画像:Mariko Mitsuda