けさは、とある観光地を旅行したときの話をします。その観光地は、それなりに知名度があり、幾つかの観光スポットもあります。特に、地元を走る鉄道会社は、さまざまな集客策を企画していることで有名です。駅ではユニークな土産品を販売し、車両内を飾り立て、ダジャレを交えた車内放送で乗客を飽きさせない工夫をしています。
ところが、いざ観光スポットを巡ってみると、このような時節柄もあるのでしょうが、活気がないという印象を受けました。観光施設の老朽化などハード面の問題もありますが、それ以上に、観光客を歓迎する雰囲気がない気がしました。
例えば、ガイドブックでレンタサイクルを紹介しているのに、自転車用の道路が整備されていません。目指した観光スポット付近に案内板がなく、通り過ぎてしまいました。「○○ホテル前」というバス停が、ホテルから離れた場所に移動しており、私が宿泊した別のホテルの従業員がそのことを知らなかったため、バス停探しに苦労しました。
私が感じたのは、「この観光地で頑張っているのは鉄道会社など少数で、他の人たちと足並みがそろっていない」ということです。
もちろん、頑張っていない人たちに問題があるのは当然です。ただ、私は、もし先ほどの鉄道会社が、自社だけでなく、他の場所の活性化にも目を向けていたら、状況は違っていたのではないかとも思いました。地域全体が盛り上がらないと困るのは、鉄道会社も同じだからです。
例えば、駅で販売している土産品を観光施設でも購入できるようにするとか、車両内で観光スポットの魅力を紹介することもできます。自社のために発揮している発想力を、地域全体を巻き込む活動にも活かせるのではないかと思うのです。
これは、組織が活気を失っていくときの1つの特徴でもあります。当社も含め、どこの会社でも、役職と関係なく、モチベーションが高く成績優秀な社員がいます。素晴らしいことですが、こうした社員の中には時折、自分を成長させることや、自分の仕事を成功させることに注力するあまり、周りが見えなくなってしまう人がいます。他の社員が皆、「自分も同じようになりたい」と、有能な社員を目標にするポジティブな人たちならいいのですが、「アイツばかり目立っている」としらけた目で見てしまうことも少なくありません。
繰り返しになりますが、優秀な社員以外の人たちが努力しなければならないのは当然です。しかし、私は、優秀な社員にもまた、もう少し周囲を顧みる気持ちを持ってほしいと思います。ですから、自分の能力に自信のある人がいれば、自分の仕事だけに100%の力を注ぐのではなく、例えば10%程度は、同僚たちの仕事にも気を配り、良い影響を与えることに注力してみてください。それで仕事の成果が10%落ちたとしても、周囲の社員の成果が数%ずつ上がれば、会社としてはプラスになります。大きな視点で組織を活性化させてくれる社員を、私は積極的に評価します。
以上(2022年9月)
pj17120
画像:Mariko Mitsuda