私事ですが、最近、ピアノ教室に通い始めました。子どもの頃に習っていたのですが、高校生になってからやめてしまったので、実に30年ぶりにピアノを練習しています。
再びピアノに挑戦してみてショックだったのは、楽譜の読み方や指の動かし方を、すっかり忘れてしまっていたことです。子どもの頃に体で覚えたことなので、何回か教室に通う中で勘を少しずつ取り戻しつつありますが、まだ完全に思い出したわけではありません。間違ってばかりです。やはり、長い期間のブランクがあると、勘も腕も鈍ってしまうのだと実感しています。
プロのピアニストでも、1日ピアノに触れないだけで調子が出なくなってしまうといいます。他の楽器でも、きっと同じでしょう。
勘や腕が鈍るという感覚は、ビジネスでも同じことだと思っています。日ごろから実践していないと、いざやろうとしても、うまくできなくなってしまうことがあるのではないでしょうか。
分かりやすいケースでいえば、「声を出すこと」です。日ごろ、挨拶をしないでいたり、何か問い掛けられてもリアクションを取らないでいたりすると、声をなかなか出せなくなります。声を出さないでいるのが普通になるため、周囲にアナウンスすべき大切なことも、おっくうになって伝えられなくなるのです。私が普段、皆さんに「声を出すように」と繰り返し伝えているのは、こうした状態に陥ってほしくないからです。
また、「お客様と話すこと」も同じです。普段からお客様に電話をして直接話を聞いたり、当社の商品の説明をしたりしていれば、どのように質問や説明をすればよいのか、どのようなキーワードが響くのかといったことが蓄積されていきます。さらには、「何曜日の何時ごろに連絡すると話が聞きやすい」といったことも分かるようになります。日々実践することで、勘や腕が磨かれるともいえるでしょう。
しかし、ブランクがあると、いざ連絡を取ろうとしても、どのようにコミュニケーションを取ればよいのか分からなくなります。お客様と接するのが怖いといった意識が芽生え、必要以上に身構えてしまいます。皆さんの中にもお客様と話すのが苦手という人がいますが、苦手意識があって避けているため、余計にできなくなっているように思えます。
私の知っている経営者は、この状態を、「必要な『筋肉』を日ごろから使っていないと、その『筋肉』は動かなくなる」と表現しています。「声を出す」「お客様と話す」といったことを実践するための「筋肉」は、日ごろから使わないと、動かなくなってしまうということでしょう。
逆に言えば、毎日実践していれば、動かなくなるのを防げます。例に挙げた「声を出すこと」「お客様と話すこと」が苦手な人は、今日から少しずつでいいので実践してみてください。勘も腕もきっと磨かれていくでしょう。
以上(2019年4月)
pj16955
画像:Mariko Mitsuda