そろそろ今年度の上期末を迎える時期です。皆さんの中には、「忙しいけれど充実した日々を過ごしている」という人が多いでしょうが、一方で、「毎日同じことの繰り返しでつまらない」と、仕事に“マンネリ”を感じている人もいるかもしれません。そこで皆さんに問いかけたいのですが、そもそも「仕事は毎日同じことの繰り返しだ」という認識、これは本当に正しいのでしょうか。今日は、自分の仕事への姿勢を考え直すためのヒントになる話をします。

私には、趣味で長年茶道を続け、数年前自分の家に茶室を造った友人がいます。先日、初めてその茶室を訪れる機会があり、お茶をごちそうになりました。訪れた茶室は数畳の小さな部屋で、茶室を飾るのも茶道具、掛け軸、花といった最低限のものだけ。意地悪な言い方をすれば簡素な部屋なのですが、私はその茶室を非常に奇麗だと感じました。

それもそのはず。友人は、人が来るたびに茶道具を必ず磨き、掛け軸や花も毎回変えているそうです。その理由について、友人はこう話しました。「お茶はいつでも飲めるけど、『同じそのお茶』が飲める機会は二度とない。だから1回のお茶を意味のあるものにしたい。『一期一会(いちごいちえ)』の精神だよ」。私はその言葉になるほどと思うと同時に、皆さんの仕事にもこの一期一会の精神を当てはめることができるのではないかと考えました。

まず、日々の仕事にマンネリを感じている人の仕事は、本当に同じことの繰り返しでしょうか。営業、総務、経理、企画、どの仕事にも必ず“相手”がいます。お客様や取引先だけではありません、一緒に仕事をする会社の仲間だってそうです。そして、茶道と同様、その相手とその時間を共有できるのは1回限りです。「相手との時間を意味のあるものにするにはどうすればいいか」を突き詰めて考えれば、おのずと仕事の中に工夫が生まれます。「同じことの繰り返し」ではないはずです。とはいえ、人間のエネルギーには限界があり、この工夫を続けるのは、なかなか大変でしょう。

そこでもう1つ考えたいのが、仕事量のコントロールです。諸説あるようですが、茶室が一般的に小さく簡素な造りになっているのは、一期一会の精神を実現しやすくするためだそうです。つまり、人が来るたび、茶道具や掛け軸、花などを無理せず奇麗に整えられるようにするため、茶室はあえて小さくし、道具も最低限のものだけにとどめているわけです。皆さんが抱えている仕事についても同じです。お客様や取引先、会社の仲間にとって必要のない“ムダ”な仕事があるのなら、思い切ってそれをやめてみましょう。そして、空いた時間を、「仕事の相手との時間をより良いものにするための工夫」に充ててください。

「工夫をやめない、ただし無理をしない」。これが皆さんに求める仕事の姿勢です。実践すれば、マンネリを感じる暇もないはずです。

以上(2021年7月)

pj17063
画像:Mariko Mitsuda

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