私はいつも皆さんに、「やりたいことや夢を持つように」「自分の理想の姿を常に目指すように」とお伝えしています。与えられた業務をただこなすよりも、自分の目指すことのために働いたほうが楽しいですし、自発的に仕事に取り組んでもらったほうが、工夫も生まれやすいからです。

ただ、私が皆さんに「やりたいことは何?」「自分の理想の姿は?」と問いかけても、多くの人はピンとこないようです。話が大きくて遠すぎるように感じて、自分事に思えないのでしょう。そこで、今日はもっと身近な視点から、「仕事への向き合い方」に関する話をしたいと思います。

先日、当社のエンジニア2人があるプロジェクトの定例ミーティングをしていたときのことです。後輩エンジニアの仕事の進め方に疑問を感じた先輩エンジニアが、「仕事は誰のため、何のためにするものか?」という話を始めました。

先輩エンジニアはこう言いました。「私は、仕事は、お客様や一緒に働いているメンバーに喜んでもらうためにやるものだと思っている。どうすれば喜んでもらえるかを常に考え、行動すれば、おのずと物事を判断できるようになる」

すると、後輩エンジニアは、とてもスッキリした顔つきでこう言いました。「よく分かります! それでは、私はまず、先輩たちに喜んでもらえるように、工夫して仕事のスピードをもっと上げたいです」。私は、これを聞いてとても分かりやすい指導だと感心しました。

同時に、「やりたいことや夢、理想の姿といった大きなものより、もっと目の前にあるもの、身近なものを大切にするほうが、皆さんが共感できるのかもしれない」と感じました。

その後、後輩エンジニアの仕事への取り組み方は目に見えて変わりました。お客様の話に前より熱心に耳を傾けるようになり、先輩エンジニアをはじめ、一緒に働くメンバーのことを考え、段取りなどを工夫するようになったのです。まだまだ失敗もありますが、仕事に対する姿勢がこのように変わったことは、大きな進化だと私は思います。

「あの人に喜んでもらいたい、役に立ちたい」と、「顔の見える誰か」のために工夫し、喜んでもらうことで自信を持つ。そうすれば仕事が楽しくなり、もっと自分なりに工夫するようになる。「夢に向かって突き進むぞ!」と拳を突き上げるだけでなく、こうした足元の一つひとつの積み重ねが、皆さんの進化にとっては、とても大切なのだと思ったのです。

そこで、改めて皆さんに聞きたいと思います。皆さんは、誰に喜んでもらうために仕事をしていますか? 「難しい要望を言ってくるあのお客様」「一緒に苦労しているプロジェクトチームのメンバー」など、ぜひ、顔の見える誰かをイメージしてみてください。その「誰か」に喜んでもらうことを考えて行動していれば、おのずと仕事への取り組み方や周りへの気遣いの仕方が変わってくるでしょう。

以上(2020年11月)

pj17031
画像:Mariko Mitsuda

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