今朝は皆さんに、少し大きな視点に立って、我が社や皆さんの仕事の社会的な意義について考えてみてもらいたいと思います。
今、世界では改めて、会社は誰のためのものか、という議論がされています。以前なら教科書通り、会社は株主のもの、が正解でした。しかし今は、これまで以上に、会社の社会的な意義が問われるようになりました。会社は株主だけのためでなく、従業員、取引先、地域社会など、直接・間接の利害関係者に配慮することが求められています。
それでは皆さんは、民間の会社がなぜ地域社会にまで配慮すべきなのかを、考えたことがあるでしょうか。自社のイメージアップ、という目先の利益を得るためということも、もちろんあるでしょう。しかし私は、長い目で見たときに、自社の利益だけでなく、地域社会との共存共栄まで考えられる、誠実で志の高い会社であることこそが、我が社の存続にとって重要だと思っています。
それを理解するヒントが、老舗(しにせ)の会社の家訓にあります。老舗の会社には、「先義後利」「利他」などの家訓がある企業が少なくありません。近江商人の「三方よし」の教えも同じです。いずれも、社会の幸せを考えることを重視した教えです。家訓は基本的に外部にアピールするものではなく、代々、家中で伝えられてきたものです。老舗の会社の経営者が残した言葉は、イメージアップを図る目的ではなく、自社を長く存続させるために最も適切な教えのはずです。
私の経験上、どのような会社にも、順風のときと逆風のときがあります。そして私は、会社の存亡に関わるほどの逆風下で、誰かに手を差し伸べられて首の皮一枚で窮地を逃れた会社と、誰にも見向きもされずに消えていった会社を見てきました。生き残った会社に共通するのは、その会社が誠実であることを理解している多くの関係者が、「この会社を支えてあげたい」「できる限り存続のために協力したい」と思っていた、ということです。老舗の会社の経営者も同じように、会社の「生き死に」を見てきたからこそ、社会との共存共栄の思いを持つよう戒めたのだと思います。
ご存じの通り、我が社も今、厳しい逆風下にあります。それでも、なんとかやれているのは、皆さんの頑張りもありますが、それだけではありません。我が社がこれまで誠実に、高い志を持って事業に取り組んできたからこそ、「応援しているから頑張って」「うちも厳しいけど、長年お世話になっているので」と、取引を継続してくださっているお客様がいるからなのです。
私は、この逆風が一段落したら改めて、我が社が取引先や地域社会のために、何ができるかを考え、そして行動するつもりです。この逆風下でも、我が社は生かしてもらったという「感謝と恩返し」の気持ちを大切にしたいのです。皆さんも、我が社や仕事の社会的な意義を感じ、取引先など全ての関係者に対して誠実に、高い志で向き合ってください。
以上(2020年11月)
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画像:Mariko Mitsuda