管理職の皆さんは、日ごろ、一生懸命、部下を指導してくれています。しかし、なかなか部下が成長してくれないと悩む管理職も多いようです。今日は、そうした悩める管理職に、私から一つアドバイスをお伝えします。それは、「部下には、答えは教えない。答えにたどり着くための方法を教える」ということです。
分かりやすい例を挙げてみましょう。部下が、何かの参考として、書籍やインターネットの中から資料を探そうとしているとき、皆さんの多くは「これを見て」と参考になりそうな資料を渡しています。部下のためによかれと思っているのでしょうが、これでは「参考になる資料はこれだ」という答えを教えているにすぎません。
皆さんが部下に教えるべきなのは、「資料の探し方」です。どのようなキーワードで探すのか、どのような得意分野の人に聞いてみるとよいか。そうしたことを教えるほうが、部下本人のためになります。もっと言えば、「どのようなキーワードで探すのか」ということから部下に考えさせ、大きくズレているようなときにだけ、「自分だったらこのキーワードで探すと思う」とアドバイスするくらいでよいでしょう。
初めから答えを教えてしまうと、部下は自分で考えられなくなります。教えてもらったそのときは、無事に参考資料を手に入れられるでしょうが、「探し方」が身に付いていないので、別のときに、部下は自分で探すことができません。
また、こうしたことが続くと、部下は、管理職に教えてもらったことが全てだと思い込みます。それ以外のこと、それ以上のことにチャレンジしなくなってしまうでしょう。これでは部下が成長するわけがありません。
そうならないために、管理職の皆さんには、常に「相手軸」で考えてもらいたいのです。これは、「相手の立場で考えて、本当にためになるか」という視点です。ここでいう「相手軸」は、皆さんにとっての部下です。皆さんには、本当に部下のためになることを考えてほしいのです。
とはいえ、相手の立場に立つのは簡単ではありません。そこでヒントとなるのは「再現性」です。
今、自分が部下に教えようとしていることは、部下が次に似たようなシーンに出くわしたとき、管理職の力を借りず、部下自らの力で再現できる方法か。部下指導をするときには、常にこの点を考えてみてください。再現性があれば、部下は自らの力で突破できるようになります。部下の成長にもつながるでしょう。
管理職の皆さんに、はっきり言っておきます。部下が、いつまでたっても管理職の力を借りなければならない状態だとしたら、それは管理職の教え方が良くないからです。
管理職の皆さん、今日から、自分の部下指導を見直してみてください。この上半期が終わる頃、皆さんが「部下のこの点が成長した!」と大いに自慢してくれることを期待しています。
以上(2019年10月)
pj16979
画像:Mariko Mitsuda