ビジネスを成功させたいなら、経営者は社内でお客さま第一を徹底することがとても大切ですが、放っておくと会社は、お客さまよりも自分たちの都合を優先する「内部志向」に陥ります。さらに問題なのは、自社が「内部志向」になっていることに気づいていない場合も少なくないことです……。
1 小さなことからも垣間見える「内部優先」
小さなことからも、お客さま第一か内部志向かを垣間見ることができます。以前、「研修中」と書かれた若葉マークのワッペンをつけさせて、新人に接客のトレーニングをさせているファミリーレストランを見たことがあります。これでは、お客さまも気を遣いますし、場合によっては、「新人なので許してほしい」というようにも受け取れます。
「なぜ、そんなことをしているの?」と私が尋ねたところ、社員から返ってきた答えは、「新人なので、周りにいるスタッフがすぐにフォローできるようにするためです」というものでした。
これは、単なる理屈でしょう。新人のフォローが目的なら、お客さまには分からないように小さなリボンでもつけて目印にすればいいだけの話です。どうして、「社内の事情」をわざわざお客さまに知らせる必要があるのでしょうか。新人だとお客さまが分かることは、お客さまにも気を遣わせることになりかねません。新人だから料金を安くしてくれるのならまだしも、お客さまに迷惑をかけたり、気を遣わせたりするのは間違いです。
こんなこともありました。時々利用するある宿泊施設で、目覚まし時計の“カチカチ音”がうるさいので、音のしないデジタル時計などに換えたらどうかと担当者に提案しました。翌年同じ宿泊施設に泊まったら、時計がなくなっていました。担当者に理由を尋ねると「今は、皆さんが携帯を持っていますから」と言われました。
つまりは、面倒の種を消してしまったのでしょう。お客さまからすれば、目覚まし時計があったほうが便利なのは言うまでもありません。内部のことだけを考えると、面倒の種をなくすという発想になってしまうのです。
2 お客さま第一がビジネス成功の根本
多くの会社を見てきましたが、小さな会社を大きく成長させた社長たちは、例外なくお客さま第一を徹底した人たちです。お客さまに良い商品やサービスを提供することなしにビジネスが成功しないことは子供でも分かることですが、経営者が率先してお客さま第一をやろうとしない限り、人は弱いもので、どうしても内部を優先しがちです。
繰り返しになりますが、お客さま第一というネジを巻き続けない限り、社内は内部志向になっていくと思って間違いありません。一旦お客さま第一になっても、すぐに元に戻ります。人は易きに流れるのです。しかし、お客さまは敏感です。そのような内部志向の会社からは、お客さまが遠ざかり、業績が低迷するものです。
内部志向の会社は、先の例にあるようにお客さまの都合より、自分たちの都合を優先しがちです。経営者や社員優先、そして、その状態がひどくなって、自分たちだけが金儲けができればそれでいいというような極端な内部志向になると、どんな手を使ってでも儲けようとして、不祥事まで起こしてしまいます。
そこまでひどくなくとも、内部志向の状態がずっと続くと、お客さまのことはないがしろになり、事なかれ主義でどんよりした社風の組織となってしまいます。反応が遅く、お客さまのことなど二の次ということにもなりかねません。
「内部志向」の反対は、「外部志向」です。「お客さま第一」を貫いている会社です。ピーター・ドラッカーが言うまでもなく、企業の価値というのは、企業外部から見た価値が第一義なのです。
3 お客さま第一の会社の特徴
お客さま第一の会社に行くと、すぐ分かる特徴があります。それは働く人の表情が明るいことです。さらには、玄関などで行き先が分からず困っていると、だれかれとなく「お伺いしていますか?」などと声をかけてくれます。
お客さま第一の会社では、やはりお客さまから喜ばれることが多く、そのことが働き甲斐となり、社員同士も切磋琢磨しながら働いているので、みんなの表情はイキイキとしているのです。
一方、内部志向の会社は、会社は自分たちのためにあり面倒を避けたいと思っています。玄関などで行き先が分からず困っていても、うっとうしげな顔をして、見て見ぬふりをされることさえあります。
「お客さまを無視しない」というのは基本中の基本ですが、お客さまの存在や意見を無視しても何とも思わないのです。無関心なのです。お客さまや外部に対する関心や、感謝の気持ちが弱いのです。
お客さま第一の会社を作るには、まず「行動」から変えることですが、このことは、次回に説明しましょう。
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