1 最もポピュラーな調味料
醤油は、和食の味付けに欠かせない調味料です。日本ばかりではなく、海外でもポピュラーになりつつあるしょうゆについての基礎知識を紹介します。
2 しょうゆの起源
今から約3000年前の中国の周王朝初期の文献に載っている、獣や鳥の肉に麹(こうじ)と塩を混ぜて発酵させた「醤(ジャン)」が、しょうゆのルーツではないかといわれています。
日本にいつごろ、どのように伝わったかは定かではありませんが、奈良時代の「大宝律令」(701年)には、醤院(ひしおつかさ)という役所が設けられ、醤をつくったり、管理したりしていたという記述が残っています。醤は、肉・魚・野菜などさまざまな原料からつくられていましたが、このうちの穀物や豆を発酵させた「穀醤(こくびしお)」がしょうゆや味噌の原型とされています。鎌倉時代には、禅僧覚心が中国から持ち帰った径山寺(きんざんじ)味噌の製造過程の中で、たまりしょうゆの素になったと考えられるたまり(溜)が発見されたといわれます。
室町時代に出版された節用集という日常用語辞典には「醤油・しょうゆ」などの言葉が載っていたことから、このころにはかなり普及していたことがわかっています。
3 しょうゆの種類
しょうゆの主な産地としては、関東では千葉県、関西では兵庫県・香川県などが挙げられますが、しょうゆは地域によって特徴が異なります。
1)濃口(こいくち)しょうゆ
濃口しょうゆは最も一般的なしょうゆで、赤みがかった明るい色で、特有の芳香をもっています。しょうゆの全生産量の80%以上を占めていて、主に関東地方で発達し、今日では全国的に親しまれています。
2)淡口(うすくち)しょうゆ
淡口しょうゆは色が薄く、塩味が強く、香りは抑えてあります。魚や野菜などの材料の持ち味や色合いを生かす料理に使われます。
3)たまりしょうゆ
たまりしょうゆは、とろみと濃厚なうまみ、独特な香りが特徴のしょうゆです。加熱すると赤い色がきれいにつくので、せんべいや照り焼きなどに使われます。
小麦をほとんど使わないでつくられるものが多く、大豆たんぱくのうまみ成分が多いため、味が濃く感じられるのが特徴です。
4)白しょうゆ
白しょうゆの色合いは、淡口しょうゆよりもさらに薄い、淡いこはく色で、甘みが強く、コクが控えめなのが特徴です。
色の薄さと香りを生かして吸い物や、茶わん蒸しなどの料理に使われます。
5)再仕込みしょうゆ
製法は濃口しょうゆと同じですが、塩水の代わりにしょうゆを使って仕込んだもので、しょうゆを二度醸造するようになるため、「再仕込み」と呼ばれます。
味、色、うまみともに濃厚で、白身の刺し身やすしのつけしょうゆとしてつくられた、山口県発祥のしょうゆです。
4 しょうゆは黒くなる
一度容器の口を開けたしょうゆは、初めの鮮やかな赤褐色からだんだん黒ずんだ色になっていきます。原因は空気中の酸素による酸化反応といわれています。この現象は、高温、直射日光などでさらに促進し、色が黒ずむと同時に風味も落ちて、品質も劣化します。
開栓時、キチンと栓をして冷蔵庫などに保管し、使い切る分だけ小型のしょうゆ差しに取るのが望ましいでしょう。
5 しょうゆを使うときの「コツ」
1)濃口、淡口の使い分け
しょうゆの大部分は濃口なので、普通の料理はこれを使えば問題ありません。特ににおいの強い魚や肉などには濃口しょうゆが必要で、照り焼きなども濃口にします。淡口しょうゆは野菜類の煮物などの色を美しく仕上げたい料理に使われます。香りも穏やかなので、素材の風味を損なわずに持ち味が生かせます。
2)吸い物、煮物のしょうゆは最後に
吸い物のしょうゆは塩味をつけるという主目的より、むしろうまみや香りなど、塩にはない特性を引き出すために使います。塩味だけなら塩で十分で、むしろそのほうが材料の色や風味を生かすのにもよいでしょう。
しょうゆを香りづけで入れる場合、最後に加えます。塩でほぼ味を調えた汁の仕上げに、味にほとんど影響のない程度の少量のしょうゆを加えるのがよいでしょう。
煮物の場合は、煮物の味付けは「さしすせそ」の順にといわれる通り、揮発性成分の多い酢(す)や香りを重視するしょうゆ(せ)は後から加えます。ただ、これは中までよく味を染み込ませたい煮物の場合で、煮魚のように短時間で表面に味をつければよいもの、おでんのようにきちんと調えられた汁の味をそのまま食材に染み込ませたいものはこの順序に限りません。煮物によっては初めからしょうゆの味を染み込ませるために大部分を使い、一部を最後に加えるやり方もあります。
以上(2023年9月)
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