皆さん、今朝は新聞を読んできましたか。テレビやインターネットでニュースを見ましたか。あるいは出社して、ほかの人と会話をしましたか。新聞、テレビ、インターネット、口コミなど、私たちは膨大な情報に囲まれています。こうした多くの情報の中から、必要な情報を正確に見極めることは、とても大切です。
皆さんは、「死せる孔明(こうめい)、生ける仲達(ちゅうたつ)を走らす」ということわざを聞いたことがあるでしょう。これは三国志に出てくる蜀(しょく)という国の軍師・諸葛孔明(しょかつこうめい)が残した逸話からくる有名な故事です。
三国時代、蜀と魏(ぎ)の両軍が五丈原で対陣中、孔明は病死しました。孔明の部下の将である楊儀(ようぎ)は軍をまとめて退却を始めました。司馬(しば)仲達は孔明の死を知り、追撃を始めましたが、蜀軍が反撃のようすを見せたので「孔明が死んだというのは謀略ではないか」と恐れ、追撃をやめて退却したという話です。実は孔明は死ぬ間際、自らが死んだことが敵国である魏の軍師・仲達に悟られれば、必ず攻撃されると考えました。そこで、孔明は自分と瓜二つの木像を作っておきました。孔明が生前に想定した通り、孔明の死後、仲達は蜀軍を攻撃してきました。そのとき、死んだとされる孔明が蜀軍を指揮して反撃してきたため、魏軍は逃げ出しました。もちろん、魏軍が見た孔明は木像です。死んだ後も、孔明は情報を巧みに操作し、蜀軍の危機を救ったのです。
「死せる孔明、生ける仲達を走らす」は「すぐれた人物は死後も生きているものを恐れさせる。または、生前と同じように大きな影響力を及ぼす」ということの例えとされます。
私は他の教訓も含んでいると考えています。例えば、孔明の立場では、情報を効果的に発信することで、自らの立場を有利に持っていけることです。一方、仲達の立場では、誤った情報を根拠に判断を下すと、千載一遇の好機を逸する場合があることです。いずれも、私たちが仕事をする上で、特に情報に接する際のヒントとなりますが、私は皆さんには仲達を反面教師として情報に接してほしいのです。
現代は三国志の時代よりもはるかに情報メディアが発達しています。新聞、テレビ、インターネット、口コミとさまざまなメディアがあります。だからこそ、私たちは、玉石混合の情報から必要な情報を正確に取捨選択しなければなりません。その基準は、「まず、その情報は真実か否か、次に、いま本当に必要か、あるいは将来必要なときがくるか」としてください。
取引先や上司・同僚から必要とされるビジネスパーソンとなるためには、相手が求める情報を、正確に、素早く、適正な水準で提供することが不可欠です。要は「情報力を身に付ける」ということになります。とは言っても、あまりにも漠然としすぎていて、何から手を付けてよいか分からない人は多いでしょう。身に付けるべき情報は、取引先・上司・同僚がいま求めるもの、これから求めるであろうものを優先してください。身に付けるための具体的な方法は、新聞を読む、書籍を読む、セミナーに参加する、上司・同僚に質問する、人脈を広げるなどです。
情報力は武器となり、業務に大いに役立つだけでなく、皆さんのビジネスパーソンとしての価値を高めます。情報力を身に付けてください。
以上(2022年11月)
op16477
画像:Mariko Mitsuda