1 そばのうんちく
この記事では、知っていればそばを食べるのがより楽しくなる、そばのうんちくについてみていきます。なお、以降で紹介するのは諸説あるうちの一説であり、異なる見解があることをご了承ください。
2 縄文時代から栽培されていたそば
そばの発祥の地は諸説ありますが、中国雲南省周辺などといわれています。
日本への伝来は早く、縄文時代とされています。高知県の当時の地層から、そばの花粉が発見されています。また、そばの花粉増加や石器の存在などから、縄文時代から弥生時代には、すでにそばの栽培も行われていたという説もあります。
3 そば切りの誕生
そうめんやうどんなど、日本の伝統的な麺類に比べ、現在のような細長い形のそば、すなわち「そば切り」が誕生したのは、比較的最近のことのようです。
そうめんやうどんのもととなったのは、「索餅(さくべい)」と呼ばれる中国伝来の麺だといわれています。索餅は、奈良時代遣唐使によって日本に伝わり、食べられるようになったそうです。
その後、詳細は不明ですが、平安時代から室町時代にかけて麺を伸ばして糸状にするそうめんが奈良県で誕生したといわれます。また、粉を練って細長く切って食べるという調理方法も中国から伝来し、室町時代初期にはすでに現在の製法に近いうどんが登場していたといわれています。
一方、本格的にそば切りが普及し出したのは、江戸中期以降のことです。この頃、そばに小麦粉のつなぎを2割ほど加えた「二八そば」が登場したといわれています。喉ごしが良くて安価なことから、これがそば人気の定着を後押ししたようです。
4 全国の名物そば
1)津軽そば(青森県・津軽)
大豆を水に浸してそば粉に混ぜ込んだものです。甘みのあるそばで、日持ちがよいとされています。
2)わんこそば(岩手県)
大食いのイメージが定着しているわんこそばですが、もともとは大切なお客さんにたくさんそばを食べてもらうためのもてなし料理だったといわれています。素早く椀(わん)に投げ入れられるそばと一緒に、刺し身や鶏肉そぼろなどの豪華な薬味が添えられます。
3)大根そば(栃木県・佐野)
刺し身のつまのように細く切った大根を、そばと盛り合わせるのが大根そばです。明治時代から郷土料理として食べられているようです。
4)深大寺そば(東京都)
その昔、江戸(現・東京都)にある深大寺の住職が、まわりの人々や全国の大名に深大寺そばのおいしさを言い広め、その味の良さが広まったことから有名になったのが深大寺そばです。
5)富倉そば(長野県・富倉)
山ごぼうの葉を干して取った繊維をつなぎにしたそばです。そばの色は濃く、シコシコとした独特の食感と豊かな香りに特徴があるといわれています。
6)へぎそば(新潟県・小千谷)
衣類ののりづけにも使われる「フノリ」という海草をつなぎにして打ったそばです。口に広がる磯の香りが特徴です。なお、へぎというのはそばを盛る細長い木箱のことです。一箸分ずつを、波紋のように美しく並べる盛りつけも、へぎそば独特のものです。
7)割子そば(島根県・出雲)
何段にも重なった器に、とりどりの薬味をのせたそばを盛るのが割子そばです。出雲そばは甘皮の部分まで粉にひくので、色が黒く、香りが高いのが特徴だといわれています。
5 そばをもっとおいしく食べるための豆知識
1)関東のそばと関西のうどん
一般的に、関東ではそばが好まれる地域が多く、関西ではうどんが好まれる地域が多くなっています。なぜこうなったか、はっきりとしたことは分からないものの、理由の一つとしてよく挙げられるのは「気候風土の違い」です。小麦の栽培には、年間を通して温暖な気候が必要ですが、そばは寒冷地に強いという特徴があります。そのため、気温の低い関東以北ではそばを栽培する地域が多く、これが食文化の違いになっていったと考えられています。
2)そばの栄養
そばには多くのビタミン類が含まれています。例えば、心臓病の予防や、食欲不振の解消といった効果が期待できるとされるビタミンBl、高血圧や動脈硬化の予防効果が期待できるとされるビタミンB2などが含まれています。また、ポリフェノールの一種であるルチンも豊富に含まれており、毛細血管の強化や膵臓(すいぞう)機能の活性化などの効果が期待できるといわれています。
以上(2023年3月)
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