2025年2月12日水曜日。東京大手町にて、経済産業省(経産省)主催のイベント、
地域の中堅・中核企業支援プラットフォーム事業「初年度報告会」 全国シンポジウム&ネットワーキング
が開催されました(運営事務局はPwCコンサルティング合同会社)。この報告会イベントは、今回が初開催となります。
地域の中堅・中核企業支援プラットフォーム事業は、経産省主導で今年度(2024年度)スタートしました。全国の中堅・中核企業(以降では「中堅企業」)のさらなる成長のため、新事業展開などを支援する地域型・テーマ型のプラットフォームを立ち上げた、というものです(注)。
(注)中堅企業とは、中小企業を除く従業員2000人以下の企業。改正産業競争力強化法で定義。
地域型のプラットフォームは北海道から沖縄までの14、テーマ型は医療や繊維、半導体・デジタルなど7、合計して21のプラットフォームが立ち上がっています。各プラットフォームでは、コンサルティング会社や一般財団法人、地域金融機関などがプラットフォーム運営者となり、支援する側の団体・企業が一緒になって、支援される側の中堅企業を人脈面、技術面、資金面などから支援していきます。いわば、「産学官金&民間の超現場感のあるエコシステム」があり、中堅企業への実践的な伴走支援を続けているイメージです。
今回のイベントは、全国各地で中堅企業の支援をしているプラットフォーム事業者がその成果を報告し合う初の試みなので、主催側、運営事務局、ご登壇者、そして参加者側も気合十分。老若男女問わず、参加者も多く(定員は150名)、注目度の高さが伺えるスタートとなりました。
開会あいさつ(経産省)やプラットフォーム事業の概要説明では、「現在、経産省はじめ関係省庁を挙げて中堅企業支援を充実させようとしている」「プラットフォームの立ち上げは、地域の中堅企業を支援するために必要な人的・技術的ネットワークを厚くしようという意味がある」といった話が出ました。今後の地域経済の発展、ひいては日本全体のために、中堅企業のさらなる成長が注目されていることが分かります。まだ年度途中ですが、現状、プラットフォーム事業の成果として、84社もの中堅企業が新事業展開などの計画を作成したということです。
また、プラットフォームにおける中堅企業支援者などへのヒアリングに基づいて、「中堅企業の新事業展開に必要な3つの変革」として、次の3点が挙げられていました。
思考の変革、組織の変革、技術の変革
この3つの変革を実現するには、やはり中堅企業単体では難しいところがあるので、支援するネットワークが重要になるというお話。プラットフォームの意義が具体的にイメージできました。
また、次の5つのプラットフォーム運営事業者が、取り組み事例の発表を行いました。
- 地域型プラットフォーム
首都圏エリア:株式会社みらいリレーションズ
甲信越エリア:インターウォーズ株式会社
中部エリア:株式会社百五総合研究所
- テーマ型プラットフォーム
医療・福祉・健康分野:認定特定非営利活動法人経営支援NPOクラブ
繊維分野:一般財団法人浅間リサーチエクステンションセンター(AREC)
取り組み事例としては、全国的に認知度の高いお菓子をつくっているメーカーが、県を代表するお土産づくりにチャレンジするために、プラットフォームのイントレプレナープログラムで学びつつ、人脈や生成AIなども活用して具体的なプロジェクトに取り組んでいる事例などもありました。
あるいは、製造業の中堅企業が「特に最近強化されている欧州のサステナブルニーズへの対応」「自社技術、商品力の用途開発」という2つの課題があることが分かり、解決するためにプラットフォームの人脈や技術的知見などを活用した事例。こうした事例が発表され、参加者は具体的な話に聞き入っていました。
印象的な話の一つとしては、繊維分野のプラットフォームの事例が挙げられます。ある中堅企業の課題解決を進めていく中で、新しい用途開発の観点から、その中堅企業を医療分野のプラットフォームの支援機関に紹介した事例もありました。地域別・分野別のプラットフォームではありますが、プラットフォーム同士の横の繋がりから、連携して支援していくケースもあるということがよく分かりました。これも、実践的な支援の好例といえます。
後半のトークセッションも、随所に面白い話が飛び出して参加者が大いに惹きつけられました。地域の中堅企業と、プラットフォーム運営者と、中堅・中小企業支援に長年携わってきたコンサルティング会社とが、中堅企業の成長や改善の実例などについてトークセッションを繰り広げたので、現場感のある話が満載。耳の痛い話もあり、共感する話もあり、いろいろでした。
老舗の中堅企業が、なぜ今、改めて自分たちのブランドを立ち上げたのか、どのように収益を上げたのか。新規事業を軌道に乗せるには何が必要だったのか。大事なのは『人』。組織の中で、現状と課題を受け止め、改革の必要性を認識し、行動につなげられるか。認識して行動できる仕組みをどうやって実現していくか。このあたりがとても重要、というお話が出ました。
ひいては、なぜ今、新規事業が必要なのか。なぜ今、この改革が必要なのか。単に「とりあえず新規事業をやってみよう」ではなく、この先の企業の「あるべき姿」を描いて、中堅企業の経営者や経営陣が自分たち自身で考え行動に移していくことが肝要、ということが、このトークセッションで強く伝わってきました(とても具体的な話がたくさん出たのですが、具体的すぎましたのでここでは割愛しています)。
- トークセッションのご登壇者
シナノケンシ株式会社 代表取締役社長 金子行宏 氏
ヤマモリ株式会社 常務執行役員 前田博文 氏
株式会社北海道共創パートナーズ 代表取締役社長 岩崎俊一郎 氏
PwCコンサルティング合同会社 パートナー 大橋歩 氏
名商大ビジネススクール教授 慶應義塾大学名誉教授 磯辺剛彦 氏(モデレータ)
参加者はトークセッションにも感銘を受けたようで、登壇者との名刺交換の列は長く続き、なかなか終わりませんでした。そして、次の交流会もかなりの大盛況。あちこちで中堅企業支援の具体的な事例の情報交換や意見交換が行われていました。
地域の経済発展、そして日本の成長には、地域の中核を担う中堅企業の発展と躍進が必要で、今、中堅企業支援の輪が全国各地で広がっていること、これからもっと広がっていくことが肌で感じられる報告会でした。大注目の中堅企業支援、これからも目が離せないと思います。
プラットフォームのウェブサイトはこちら。事例やイベント情報などが確認できます。
https://chiiki.platform.go.jp/
以上(2025年2月14日)
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