1 カレーのうんちく
この記事では、知っていればカレーを食べるのがより楽しくなる、カレーのうんちくについてみていきます。なお、以降で紹介するのは諸説あるうちの一説であり、異なる見解があることをご了承ください。
2 「カレー」の語源
カレーの起源となったのは、インドとその周辺諸国の料理だといわれています。しかし、インドには「カレー」という名の料理はないようです。インド料理でカレーにあたる料理には、日本のようなカレー粉は使われません。食材や調理法に合わせ、その都度、必要なスパイスを組み合わせます。中にはあらかじめ混合されたスパイスもあり、こうしたインドの伝統的な混合香辛料は「マサラ」と呼ばれています。
カレー(Curry)の語源については、タミール語で「ソース」を意味する「Kari(カリ)」に由来するという説や、ヒンズー語で「おいしいもの」を意味する「Turcarri(ターカリー)」から来たという説など、諸説あります。
3 英国人とカレー
英国は1600年代初頭、インドにインド以東のアジア地域との貿易を独占的に行う特権会社、東インド会社を設立しました。インドの植民地支配が国家による支配に切り替えられるまで、東インド会社がインドの植民地支配の機関としての役割を担いました。これは、当時は貴重品だった香辛料を確保するために、日常の食事の中でさまざまな香辛料を取り入れているインドを支配して、英国が香辛料貿易を独占することが目的であったとされています。
1772年ごろに、東インド会社社員ヘースティングズが、英国にカレーの原料となるスパイスを伝え、このスパイスを使った料理と米を組み合わせた料理が、英国でのカレーの始まりだといわれています。なお、このヘースティングズは、のちにベンガル総督になりました。
インドのカレーは、基本的に小麦粉を使わず、他国のもののようにとろみの出るまで煮込むことはあまりありませんが、英国では小麦粉をバターなどで炒めたルーを使う煮込み料理としてアレンジされ、大人気となったようです。
4 日本に紹介されたカレー
日本に初めてカレーの作り方が紹介されたのは、明治5年(1872年)に刊行された敬学堂主人の「西洋料理指南」と仮名垣魯文の「西洋料理通」といわれています。
これらの料理書では、カレーはご飯にかけて食べるものとして紹介されていたようです。日本のカレーには、はじめからご飯がつきものだったようです。
5 ひょんなことから見直された国産カレー粉
初めての国産カレー粉は、明治36年(1903年。明治38年という説もある)に、大阪の「今村弥」(現・ハチ食品)が発売したのが最初だといわれています。その後も各社からカレー粉が発売され、日本のカレー粉は徐々にその品質を上げていきました。
しかし、当時のプロの料理人たちは国産カレー粉の質が劣ると考え、英国のC&B製カレー粉を中心に使っていたようです。ところが、自社のカレー粉の日本での流通量が出荷量に比べて多すぎるという疑いを持ったC&B社が調査を行ったところ、昭和6年(1931年)に出回っていた商品の相当数が偽物であることが判明し、騒動になりました。
ただ、結果的にはこの一件により、国産カレー粉の品質がC&Bのカレー粉に遜色ないと知れ渡りました。そして国産カレー粉が一気に普及し、家庭の食卓にカレーが並ぶようになったといわれています。
6 カレー調理に革命を起こした即席カレー
家庭で作るカレーといえば、今ではルーを割り入れて溶かすだけの即席カレーが一般的です。即席カレーの元祖とされているのは「一貫堂」の、肉も入っていて、お湯に溶くだけで食べられる「カレーライスのタネ」ですが、詳しい資料はありません。そのため、大正3年(1914年)に発売された岡本商店の「ロンドン土産即席カレー」が元祖といわれることもあります。
また、大正15年(1926年)に「浦上商店」(現・ハウス食品)が「ホームカレー」を発売するなど、現在まで続くブランドの商品が登場しています。
なお、さらに手軽に食べられるカレーとして人気の高いレトルトカレーの元祖は、昭和43年(1968年)に発売された「大塚食品」の「ボンカレー」といわれています。
7 カレーをもっとおいしく食べるための豆知識
1)カレーうどんやカレーパンの誕生
カレーの魅力の一つに、他の色々なメニューにアレンジできる応用力の高さがあります。例えば、カレーを使った代表的なメニューにカレーうどん(そば)やカレーパンなどがあります。カレーうどん(そば)の始まりについては詳しい記録が残っていませんが、明治41年(1908年)ごろには、大阪のそば屋で「カレー南蛮」が誕生していたようです。また、カレーパンは昭和2年(1927年)に東京のパン屋である「名花堂」(現・やきたてパン カトレア)が発売を開始しました。
2)香辛料の薬効
カレーに使われる多彩な香辛料は、その多くが漢方薬として使われるものでもあります。例えば、ターメリックは消毒効果を持ち、肝機能を高める作用のある「ウコン」、クローブは消化促進や口臭予防効果のある「チョウジ」の別名です。
以上(2023年3月更新)
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