ビジネスのデジタル化が急速に進んでいます。その影響もあり、「感情を表に出さず、とにかく機械のように働くこと」を【効率化】と考える人もいるようです。しかし、私はそうした働き方には反対であり、デジタル化が進む時代だからこそ、「よりウエットに、人と人とのつながりを深める」ことを重視したいと考えます。それが私の信条であると同時に、今後のビジネスの可能性を広げていくために欠かせない、重要な要素であると信じているからです。

私には、尊敬してやまないビジネスの恩師がいます。今から20年ほど前、その恩師から「君は本当にすごいな!」と褒められたことがあります。それは、私が電話とメール、提案書のやりとりだけで、一度も相手と会うことなく数百万円の契約を獲得したからです。今でこそオンラインでの商談が普及していますが、当時はそのような発想は全くありません。「とにかく会って話そう」というのが通常です。しかもその相手は、社会的に非常に“おかたい”業界の人です。常識的に考えて、相手が一度も会ったことのない私と契約をするなんて考えられません。

にもかかわらず私が契約できたのは、もちろん会社の実績もありますが、それ以上に私の本気の姿勢と熱意が伝わり、私自身を信頼してもらえたからだと思っています。

皆さん、私はどうやって会ったことのない相手の信頼を得たと思いますか。

「人のどこを見て、信頼するか」は人それぞれですが、自己分析をしてみると、電話などのやりとりだからこそ、挨拶をきちんとするとか、時間などの約束を守るといったことに注意していました。そして、ここが重要なのですが、相手から難しい要求をされても、その難題と真正面から向き合う姿勢を決して崩しませんでした。夜遅くまで電話で話したり、一日に何十通もメールでやりとりしたりしました。互いの上司を説得するための作戦を一緒に考えたことも何度もありました。そうした中で強固な信頼関係が生まれ、「あなたと、このプロジェクトを成功させたい!」と互いに思えるようになったのです。

表面だけを捉えれば、電話やメールだけの営業は効率的に映り、そこばかりが注目されます。しかし、この例で私が心掛けたのは、泥臭いコミュニケーションを通じて、私の熱意を示すことでした。電話やメールは手段にすぎません。

これからのビジネスでは、画面越しでしか話したことのない相手と提携することが普通になります。そのとき、皆さんは相手のどこを評価して「組んでもいい!」と判断しますか。逆に、相手からの信頼をどのように勝ち取りますか。ましてや今は「個」を尊重する時代です。聞こえはいいですが、要は「会社の看板を外した状態で、皆さんが、どれだけ清く正しく存在感を示せるか」ということです。感情を奮い立たせ、熱い思いを伝えることがその答えになるはずです。

以上(2021年1月)

pj17038
画像:Mariko Mitsuda

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