年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人 杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が今回紹介する面白い起業家は、五味田匡功さんです。

●団体HP【ホワイト財団】
https://jws-japan.or.jp/

1 足元の状況を再確認

少しかための話となりますが、五味田さんを紹介する前に、足元の状況について確認したいと思います。

2018年11月1日に内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室が発表している、【デジタル・ガバメントの取組状況について~ワンストップサービスの実現に向けて~】をご存じでしょうか?

上記の20、21ページが以下になります。

ステップ1:手続の見直しを示した画像です

ステップ2:企業が有する従業員情報の新しい提出方法に係る構想を示した画像です

本資料「ステップ1:手続の見直し」冒頭には、次のように記載されています。

  • 各種申請・届出手続をマイナポータルからオンライン・ワンストップで実施できるサービスを平成32年度(資料に和暦で掲載されています)から順次開始できるよう検討を進める。具体的な対象手続等は関係府省の状況等も踏まえ、精査の上、決定する。
  • 現在、手続ごとに必要な情報の提供を求めているが、申請・届出手続のオンライン・ワンストップ化を行い、マイナポータルを通じて各種手続に必要なデータを行政機関等のシステムに連携。

あくまで、私の主観ですが、「各種申請・届出手続をマイナポータルからオンライン・ワンストップで実施できる」というくだり。これは、来年から企業と行政(政府)とを直接結ぶということを意味しているのかもしれません。これって税理士、社労士、司法書士、行政書士など、士業の皆さんの主たる業務である【手続き業務】が減っていく可能性があるのではないかと認識しました。

他方、日本再興のための【成長戦略】を政府が策定し、日本経済が景気回復を経て長期的に安定した成長を実現していくのに、内外の潜在需要を顕在化しつつ民間投資を喚起する成長戦略を行い、労働生産性を高め潜在成長力を強化することが不可欠であるとしています。「働き方改革元年の今年、企業も、より本格的に取り組まなければならないのだ」と個人的に感じます。

こうした世の中の動きを相当以前から先取りし、社労士事務所で先進的な活動をされているのが五味田さんなのです。また、次世代に残したい企業を【ホワイト企業】と定義し、それを世に広めるための財団(一般財団法人 日本次世代企業普及機構・ホワイト財団)を設立し、奮闘されています。

では、五味田さんの紹介を始めましょう。

2 お会いして10年と少し。常に先進性を持った社労士事務所経営を目指して

現在38歳の五味田さん。お会いしたのは、五味田さんが27歳の頃だったと思います。その頃から先進的な考えをお持ちであり、事務作業一辺倒な士業の方が多い世界で、五味田さんのことを、良い意味で異質に感じたことを今も鮮明に覚えています。

五味田さんは和歌山県南で育ち、ご実家の事業を弟さんに任せて、自分は別の事業家になる意志を早めに固めて大阪の大学へ。たくさんの事業を数字面から見る、研究できるということに引かれ、会計事務所に入りました。そこで、会計事務所の世界を見聞きし、競合ひしめく中での独立は成功確率が低いことを実感します。そこで大型事務所の少ない社会保険労務士(社労士)の世界で独立を決意、猛勉強の末、社労士と中小企業診断士の資格にW(ダブル)で合格します。

会計事務所の新規事業の一つとして社内独立を果たし、その後自身の事務所を開業。この社労士と中小企業診断士のWライセンスを生かして人事・労務設計を行い、多数の企業サポートを実践しています。

社労士事務所の看板を掲げながらその領域は多岐にわたり、事業設計、補助金申請、資金調達、企業の【経営企画】的立ち位置にまで広げています。

3 20代後半からの事務所経営のコンセプトを簡単に

五味田さんに、20代後半からの事務所経営について、そのコンセプトを尋ねてみました。

まず、初期。この頃は助成金、補助金を経営者に徹底的に知らせることにしたと言います。そのときに大切にしていたのは、経営者のサポートだけをするのでなく、「経営者が従業員を大切にしているか?」「人を大切にする経営者が伸びる!」ということを信念に置くこと。この信念に基づき、サポートを多数行っていたそうです。

次に、5年ほど前。この頃から企業の組織コンサル、経営コンサルを前面に押し出すようになりました。時には、理念の確認、中期経営計画立案、事業の組み立て、商材拡販に至る事業領域全般に関わるところまで深く、クライアントファーストの目線で取り組んでいました。

そしてここ最近は、開業以来磨き上げてきた一流のノウハウを誰でも活用できるようにしています。例えば、士業未経験者であってもすぐに一人前化できるように、多様なコンサルティング領域をコンテンツ化し、「どのタイミングでどうクライアントに提供していくか?」を、マーケティング手法を使って所員に活用できるように仕組み化したそうです。

4 社労士業界と今後について。そして、ホワイト財団設立の経緯について

五味田さんに、社労士事務所の名前の由来について尋ねたことがあります。五味田さんの事務所の名前は【ソビア社会保険労務士事務所】です。この「ソビア」とはいったい何か?

ソビアを右、左、真ん中の順で読み上げるとアソビとなります。決してふざけた意味ではありません。企業理念に掲げる「Focus on your Dream!=お客様の「夢中」を創り出すお手伝いをし、そして私たちがどの企業様よりも「夢中」で仕事に取り組みたい」ともつながっています。子供の頃、夢中になって、面白がって、時間を忘れて取り組んでいたあの頃のように、クライアントの本業のお手伝いができるようにと、「ソビア」と名付けたそうです。

私は、これまで数多くの社労士事務所の代表の方々に出会ってまいりましたが、これほどまで先進的な活動をしている方はなかなかいません。

また、ここ最近の社労士業界については、五味田さんは次のように述べています。

  • 社労士の資格者は年々増加しています。特に、大手企業退職者や退職者予備軍を中心に、資格ホルダーが増えています。資格者が増えることで競争激化の助長となります。
  • 一方、社労士の顧客となり得る中小企業は減少しています。ニュースその他で周知の通り、後継者難による廃業が後を絶たず、企業数および従業員数が減少しており、この点でも競争が激しくなってきています。
  • 本稿の冒頭で紹介した通り、デジタルガバメントは一層加速しています。給与計算や、入退社手続きなどの事務手続き業務自体がデジタル化の方向にある中で、規模にかかわらず先進的な企業は自社内で完結し、社労士経由での業務が不要になろうとしています。

そもそもITリテラシーが低い社労士も多く、業界の競争激化とマーケットそのものの縮小が大きな課題と感じます。

また、経営者目線、従業員目線の、どちらかに偏った活動をする士業も多いと感じますが、五味田さんは、クライアント企業の満足、クライアント企業経営者の満足、クライアント企業従業員の満足、自事務所所員の満足という全てが満足であって初めて、次世代に残る企業になると考えています。

この次世代に残すべき企業を増やしたい。そこで企業成長を計測する指標を各項目に設定していき、その指標を達成する企業、目指す企業において、会社・経営者・従業員がそれぞれバランスよく指標に到達していれば、その企業を【ホワイト企業】と認定する。こうした「ホワイト企業認定」を実現するために、財団設立の運びとなっていったそうです。

5 自己評価よりも他人評価がこの国の国民性。ホワイト企業は他人評価であることが重要

五味田さんから面白い話を伺ったことがあります。あるとき、「地震などの災害発生時でも、コンビニで整然と並ぶ日本人の礼儀正しさ。それはなぜか、ということを考えたことはありますか?」と五味田さんから質問されました。

五味田さんは、日本人の『他人の目線を気にする国民性』からそうなるんだと思ったと言います。村社会的発想から、他人目線を重要視する、その「他人目線」を良い意味で企業活動に利用できるのでは?と思ったことを、ホワイト財団運営にも役立てているそうです。

これに関連して、私自身も感じるところがあります。ここ最近の人材採用マーケットについては、人手不足、採用難から自己(自社)評価を高くし、過大化・虚実化して採用広告に掲載。そして、それにある意味“だまされた”不幸な人が入社し、数カ月から数年で転職してしまうという悪循環。まさに人材採用マーケットの巨大化というより肥大化で、企業をむしばみ、害悪化していることへの怒りすら感じます。それに対してホワイト企業に認定されるという他人(第三者)評価、客観性があることで人材採用マーケットだけに限らず、企業活動全般の評価も上がります。ホワイト企業として認定された企業は、まさに次世代に残すべき企業としての意味があると感じます。

6 ホワイト企業認定とアワードについて

1)ホワイト企業認定について

ISO、プライバシーマークなど、以前からさまざまな国際的な企業向け資格認定を見てきましたが、ホワイト企業認定がそうした資格と違うのは、認定審査、認定費用が【無料】であることです。費用がかかるのは認定の翌年からの更新費用のみ。お金を払って資格や認定を取得するようなものも世の中には多数存在しますが、ホワイト企業認定はその類ではありません。

しかしながら無料といえども、簡単に認定されるものではありません。認定されるのは、申請する大企業でも半分以下、中小企業だと場合によっては5%程度となっています。ある意味、次世代に残る、変化に耐え得る企業を創出していくためにも、ホワイト企業認定は、まず変化(改革、改善、改良、時には抜本的に)を求められる認定指標となっています。認定を受けた会社の中には、新卒のエントリーが前年の5倍になった会社、各メディアへ認定企業をアピールする等などプラスの効果が得られた会社もあります。詳しくは財団HPをご覧ください。

●団体HP【ホワイト財団】
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2)ホワイト企業アワードについて

「ホワイト企業アワード」は、2016年に始まりました。大賞、特別賞、ワーク・ライフ・バランス賞、女性活躍部門賞、ダイバーシティ部門賞、CSR部門賞の各部門で表彰するもので、スタートからたった1カ月で142社がエントリーしました。

2017年の第2回では272社が応募、ホワイト制度部門、イクメン支援部門も設定され、13社が受賞しています。2018年には一気に応募が877社となり、11部門27社が受賞しました。今年も第4回のアワードの開催を予定しており(2019年1月末締め切り)、ビジネスモデル、生産性、健康経営、柔軟な働き方、人材育成、働きがいなど10部門のエントリーを募集しました。2019年1月17日時点で、1200社がエントリーをしており、この時点で昨年を大きく上回っています。

五味田さんは、ホワイト財団の活動により、これから激変する社会で変化に耐えながらも成長できる企業を創出、見いだし、認定し、会社、経営者、そこに集う従業員を幸福に導くということを掲げています。また、この財団運営に関わる全国の士業に活躍の場を同時に創出しようとしているところです。五味田さん、三方良しどころでなく、四方八方世の中をホワイト化しようと企画しています。ますます活躍に期待したいと思います。

五味田さん・執筆者の近影の画像です

以上(2019年2月作成)

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