私はリモートワーク総合人材企業であるキャスターで、インサイドセールス・カスタマーサポート事業部のマネージャーを務めており、約40名のメンバーをリモートでマネジメントしています。
仕事柄、新型コロナウイルスの影響もあり、多くの企業で急遽リモートワークを導入したものの、事前準備やノウハウが足りないことから、リモートワークについての質問や相談を多々いただくようになりました。
ご相談の内容は多岐にわたりますが、どのような業務にも共通し、特にマネジメントで重要になるのは「コミュニケーション」です。そこで今回は、リモートワークで事業を拡大させ、メンバーの成果創出を促進するコミュニケーションのポイントについて、弊社の事例を通して紹介していきます。
1 テキストにも感情を
弊社では「リモートワークを当たり前にする」をミッションに掲げ、2014年の創業以来全社で常時リモートワークを実施し、現在では45都道府県に住む700名以上のメンバーが活躍しています。
弊社のリモートワークでのコミュニケーションは、ほぼ9割をチャットのテキストで実施しています。その中で、顔文字・絵文字での感情表現を用いるようにしています。
例えば、同僚に
「お疲れさまです。17時までに報告をお願いします。」
という依頼をする場合、
「お疲れさまです^^17時までに報告をお願いしますm(_ _)m(おじぎ)」
というように、文字に柔らかみを与える顔文字や絵文字を多用しています。なぜなら、顔を合わせずに、テキストだけで会話をしていると、「コミュニケーションが取れているのか、不安になってくる」のです。
顔を合わせて会話をしていると、表情や声色で相手の感情を判断できますが、チャットだとそうはいきません。そのため絵文字や顔文字で感情の代替や気遣いをすることが重要です。
また、普段顔文字を使っている人が、顔文字なしの文章でコミュニケーションしている場合は、「怒っていて厳しく伝えたいのだろうか」「仕事で忙しくて余裕がないのかもしれない」など、相手の感情についても把握できます。
ただ、この感情表現の量はリアルの場面と同じでよく、実際に感情をあまり出さない人は無理をする必要はありません。自身のストレスになることは避けるべきですし、対面でのコミュニケーションスタイルから大きく変えなくて良いでしょう。可能な範囲でお礼を言う際に、花の絵文字を付ける程度のことを少し意識してみてください。
2 スピードと状況共有
チャットはメールより、同期型の要素が強いコミュニケーションツールです。
メールは手紙と同じでいつ相手が見ているかわからないので、多少返信に時間がかかったとしても送った側は不安を感じません。一方でチャットではリアルな会話と同じような反応を求められることが一般的です。
例えばオフィスで話しかけて、相手が無反応だったら心配になりますよね。
チャットも同様に、送った相手が1時間たっても回答がなければ不安に思う人が多いでしょう。これは、送る側が受け手側の状況が見えないために発生する疑心暗鬼です。
オフィスでは相手が誰か他の人と会話していたり、忙しそうな様子が見られるようであれば話しかけるタイミングを見計らってくれたりしますが、リモートワークではそうはいきません。そのため、チャットで回答を求められる側、主に管理職が気をつけるべき点は下記の3点です。
- チャット=非同期コミュニケーションである、という共通認識を持つ
忙しければチャットを返せませんし、返せるときに返すものです。
すぐに返信がないからと言って不安に感じる必要はありませんし、いつチャットを送っても良いのか… …と気遣いをする必要もありません。まずはチャットに対する共通認識をチーム内ですり合わせましょう。 - 回答はせずとも、チャットを見ていることを伝える
とはいえ、一言でも返信があると相手は安心します。きちんと回答するには時間がかかる内容だった場合、後でゆっくり考えて返信しようと考えがちですが、「いま手が離せないので1時間後に回答します!」など、簡単な文章で良いので反応しておきましょう。 - 回答できない時間帯をメンバーに発信しておく
リモートワークで様子が見えない相手の状況を察することは困難です。会議などの予定はカレンダーなどで共有する、作業の期限に追われている場合は積極的に自身の状況を発信するなどして、メンバーに理解を求めましょう。
聖徳太子にはなれないので、スピード良く反応と状況を共有し、メンバーに把握してもらうと、安心感を持ってもらうことができます。
3 適度に顔を合わせて会話を
文字だけでコミュニケーションを取っていると、相手の個性や人格がわかりにくかったり、特に初めは言いたいことを言いにくく、必要な報告や相談が上がってこなかったりする可能性があります。
そのリスクをなくすために、Web会議ツールを用いたビデオチャットで顔を見せ合う、気軽にコミュニケーションを取ると有効です。
1on1など、定例的にメンバーとのコミュニケーション機会を設けることはもちろん必要ですが、テキストだとうまくニュアンスが伝わりにくいと感じた場合は、ビデオチャットで話すように誘導してください。そこでテキストでは伝わりきらなかった悩みや相談を回収するのです。
現在は便利なビデオチャットがたくさんあります。
Whereby、ZOOM、LINE、Google meet、Microsoft Teamsなど、URLをクリックすればすぐに会話を始められるので、活用してみてください。
4 過程のマネジメントはしない
ここまで、リモートワークでのコミュニケーションについてお話してきました。
加えて、リモートワークにおけるマネジメントで最も重要なのは、成果と期限を重視することであり、過程のマネジメントはしないことです。
過程が非常に見えにくいのがリモートワークの特徴です。「返信がないのでサボっているのかな… …」「休憩に行きすぎじゃないか……」などといくら想像しても、実際の姿は見えないので、確認する方・される方も疲弊してしまいます。もちろん仕事の進行が上手ではないメンバーには、期限と品質を守ってもらうために、ある程度過程を報告するように指示しますが、あくまでも重視するのは成果です。
成果がそのメンバーに課しているミッションに対して妥当であれば、大いに褒めます。他のメンバーが見えるところで、沢山の絵文字を使って大げさとも思える感謝を伝えましょう。
弊社では、成果によって人事評価を行う仕組みのため、メンバーの中に成果思考が育まれやすい環境となっています。
そして管理者は過程ばかり気にして、メンバーがいま何をしているのか逐一チェックをするようなマイクロマネジメントを止めましょう。
成果が出てこなかった際に、はじめて過程やモチベーションを指導してメンバーを導いていければ、より良い組織になります。
5 リーダーの重要性
私が所属する事業部は、主にテレアポ、テレマーケティング、カスタマーサポートなどの案件を多くご依頼いただいており、弊社メンバーがリモートワークで業務対応するサービスを運営しています。
このようなコール業務はストレスを感じやすい業務だと言われており、コールセンター専門誌などで発表されている平均離職率は36%となります。しかし、弊事業部の離職率は3%と非常に低くなっています。定期的に行っているストレスチェック結果を見ても高ストレスなメンバーが0名という状況です。
なぜ組織としてうまくいっているかを分析すると、リモートワークが寄与している可能性もありますが、各プロジェクトをリードしているスーパーバイザー(案件リーダー)が、職場の雰囲気づくりを担っていることも大きな要因になっています。弊社では「キャスターが掲げる3つの軸足」という次のような言葉があります。
1 全ての人を「尊重」し、その人のために「尽力」する
2 現代社会とこれからの未来における「多様性」を重んじる
3 関わってくださる全ての人を「信頼」する
この3つの言葉を採用時や入社後と、定期的に言葉を変えながら伝えています。
上司・部下やクライアントと立場を分けずに相手を尊重し、信頼すること、多様性を持ったものの見方をすることが重要だということです。
これを私からスーパーバイザーに伝え、メンバーにも浸透させています。
そのようなコミュニケーションの流れをつくること、考えをチーム内で浸透させることが、実際に会ったことがないリモート組織で有機的に成長できるポイントだと言えます。
以上
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