書いてあること

  • 主な読者:さらに成長するためのヒントが欲しい経営者
  • 課題:自分の考え方をバージョンアップするためにもがいている
  • 解決策:他の経営者の思考習慣も聞いてみる

1 経営者ならではの考え方

社員には理解してもらえないが、経営者仲間で話をすると「そうそう!」と分かり合える、経営者ならではの考え方があります。会社の成長、自分と家族の生活、社員とその家族の生活、社会への貢献などについて責任を負う経営者は逃げられません。

それが社員との視点の高さや広さの違いとなり、経営者ならではの考え方につながっています。経営者が社員と同じレベルで考えているようでは物足りませんが、その一方で、独り善がりになるのも問題です。

今回は、「誰かに相談されたら全力で答える」「“生煮え”の状態でビジネスをスタートさせる」「不確定な未来に何を夢見るかが勝負」という3つの思考習慣を取り上げます。経営者ならではの考え方と、独り善がりにならないためのポイントを紹介します。

2 誰かに相談されたら全力で答える

ビジネスに関して、他人からアドバイスを求められることがあります。自分の得意分野や、かつて経験したことがある事柄ならば、自信を持って回答できるでしょう。しかし、そうではない場合、多くの人は「間違えたことを言ったら格好悪い」などと考え、いつものように話せなくなります。

この点、多くの経営者は、そうした態度を取ることは逆に相手に対して失礼であると考えています。相手と自分の立場を入れ替えて考えれば、その理由は明らかです。人は、本当に悩んでいて、「その人に相談したい!」と思うから、真剣にアドバイスを求めてくるのです。にもかかわらず、自信なさげだったり、“逃げを打って”当たり障りのないことしか言わなかったりするのは、相手の思いを軽んじることにつながります。

多くの経営者にはメンターがいます。そして、本気で悩んだときにメンターにアドバイスを求めます。日ごろ、こうした経験をしている経営者は、自分がアドバイスを求められれば、当たり前のように全力で答えるのです。

ただし、たとえ経営者に「相手に礼を尽くす」という思いがあっても、的を射ない話ばかりでは、相手の問題解決にはつながりません。少し見方を変えると、その相手は別の誰かに相談したほうが有意義なアドバイスを得られた可能性があり、この点において機会損失が発生していることになるのです。

大切なのは、相手の問題解決をサポートすることです。もし、有意義な回答ができそうもないときには、「私も少し考えてみるから、日を改めて話そう」と言って、経営者自身の考えをまとめる時間を確保したり、「その点については、私よりも○○さんのほうが、良いアドバイスをしてくれると思うよ」といったように、別の選択肢を示したりすることも大切です。

3 “生煮え”の状態でビジネスをスタートさせる

多くの社員は、ビジネスプランは細部まで徹底的に練り込んだほうが成功の確率が高くなると考えています。同時に、社員は失敗を過度に恐れて弱気になり、その時点では見えるはずのないものまで見ようとしていることもあります。

経営者も、細部まで練り込んだビジネスプランのほうが好ましいことは分かっています。ただし、そこまで調査するには時間がかかり、他社に先を越されてしまうリスクがあることを懸念しています。また、そもそもその時点でどんなに考えてみたところで、「やってみなければ分からない」ことがビジネスには多いことも知っています。

そのため経営者は、“生煮え”の状態でビジネスのスタートを切ります。ここでいう“生煮え”とは、思いつきに近く、突っ込みどころ満載の状態のことではありません。もっと詰めなければならないところはあるものの、それは実際にビジネスを進めながら解決していけばカバーできると思えるレベルです。社員が「失敗したくない」と考えるのに対し、経営者は「やってみなければ、成功も失敗もない」と考えています。

このことを感覚的に理解している社員もいます。しかし、“生煮え”のレベルは分からないことが多々あり、多くはそこで思考停止となり、活動を前提とした準備をしません。そうした状態で、経営者がアクセルやブレーキを踏むことになるため、社員は驚いてしまいます。経営者にとっては当たり前のタイミングでも、社員にとっては急発進、急停止に感じられることがあります。これではトラブルが起こりかねません。

そこで経営者は、できるだけ明確にアクセルとブレーキを踏む根拠、つまり“生煮え”のレベル感を社員に示し、社員が態勢を整える時間を与えた上で、実際にアクセルとブレーキを踏むように心掛けなければなりません。経営のかじ取りは経営者の役割ですが、現場でオペレーションをするのは社員です。現場が混乱した状態では、ビジネスで良い成果を期待するのは難しいのです。

4 不確定な未来に何を夢見るかが勝負

ビジネスは不確定要素の連続です。これがビジネスの難しさであり、面白さでもあるのですが、このことを言い訳にする社員が少なくありません。「先のことなど分からないのだから、もう少し先が見えてきてから動こう」といった具合です。

確かに未来のことは誰にも分かりませんが、経営者がこのことを言い訳にすることはありません。むしろ、ビジネスチャンスであると前向きに捉えています。なぜなら、未来を誰も知らないということは、大企業も中小企業も平等な状態にあるということであり、発想と行動力次第では、大企業に先駆けて成功できるチャンスがあるということだからです。

そのため、経営者は寸暇を惜しんで情報収集をします。そして、自分なりに未来のイメージを固めていきます。例えば、将来人口推計のように、今の人口動態からある程度明らかになることがあります。また、特にテクノロジーの進化によって実現するだろうという仮説が立てられるものもあります。自動運転のようなものです。

こうした断片的な情報をつなぎ合わせて、例えば「未来の世界に、『あらかじめスマートフォンやカーナビゲーションに病院や介護施設を登録しておけば、高齢者が運転しなくても、自動運転で安全に目的地に行けるサービス』があれば、きっと市場に受け入れられるだろう」などと、具体的なビジネスプランに落とし込んでいくのです。

未来は分からなくて当然であり、やらないことの言い訳にはなりません。また、分からないといいつつも、既に実現することが明らかな未来があるのも事実です。経営者は、情報収集を通じて国内外の新旧のビジネスモデルを知ることに余念がなく、常に想像力を膨らませてリアルのビジネスに結び付けるヒントを探っています。これはとても大切なことなのです。

ただし、不確定要素を独り善がりにつなぎ合わせて、都合の良い未来像ばかりを思い描くのはいけません。自分の考えについて社内外の人から意見を求め、行きつ戻りつの“思考実験”を繰り返すことを忘れないようにしましょう。

以上(2020年7月)

pj10028
画像:unsplash

Leave a comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です