書いてあること

  • 主な読者:朝礼のバージョンアップを図りたい経営者
  • 課題:長年行ってきた朝礼のスタイルを、どう変えたらよいのか分からない
  • 解決策:伝える力(表情、声のトーン、話すスピード、つかみのネタ)を磨く、人材育成の場とする

1 朝礼のバージョンアップが求められる

朝礼は経営者の思いを伝え、全社的な認識の統一を図る貴重な機会です。経営者・役員239人を対象とした独自アンケート(日本情報マート、2021年2月調査)によると、

30.5%の企業が朝礼を行っている

という結果が出ています。コロナ禍でリモートワークが進んだり、職場のコミュニケーションの在り方が変わってきたりして全体的に朝礼は減っているようですが、今でも朝礼が日本企業に深く浸透しているのは間違いないようです。

ただ、朝礼の在り方は変わってきています。従来の朝礼は「集まることに意義がある。上意下達の場」という面がありました。しかし今では、朝礼を

参加者の成長を促す、フラットなコミュニケーションの場

にバージョンアップする企業が出ています。

2 朝礼のバージョンアップの鍵

朝礼をバージョンアップするための前提は、

経営者や上司が「伝える力」を磨くこと

です。皆さん自身の話術を自己評価してみてください。「つかみがない、論点が不明瞭、話が長い、自分の話ばかり、インタラクティブでない、締めのメッセージが曖昧……」といったことはないでしょうか。

オンラインが浸透してくると、制約が多い中でも相手をうまく引き込む【話し上手】が登場しました。そうした人の話を聞いて耳が肥えた社員は、つまらない話に厳しくなっています。リアルの朝礼の場合、皆さんの話がつまらなくても社員は聞く姿勢を崩しません。目の前で上司が話しているのですから当然ですが、ほとんど話を聞いていないでしょう。オンラインでビデオオフを許しているなら、画面の向こうで別のことをしているかもしれません。それくらい人に聞いてもらうのは難しく、努力が必要なのです。伝える力を磨くテクニックには、表情、声のトーン、話すスピード、つかみのネタなどがあります。

3 人材育成の視点を持つ

従来の朝礼は「1対多」ですが、バージョンアップされた朝礼は「多対多」とし、参加者の成長を促します。そのためには経営者や上司が一方的に話をするのではなく、社員が自由に意見やアイデアを出せる雰囲気が理想です。

とはいえ、いきなり意見を出してもらうのは難しいため、朝礼とは別に「1対1」のコミュニケーションを取ります。実際、多くの経営者が「朝礼だけでは十分にコミュニケーションが取れない。社員のメンタルが心配」という理由で、「1対1」のコミュニケーションを取っていますが、その結果、

社員が「発言してもいいのだ」と気付き、実際に発言することで自信を持つ

という効果が出ています。特にオンラインで「1対1」のコミュニケーションを取る場合、経営者や上司が意図せずに醸し出してしまう「圧」も緩和されるため、対話が進みやすくなります。

こうして社員とのコミュニケーションが進むと社員が発言しやすい環境となり、若手社員も頭角を現していきます。こちらが想定しているよりも仕事ができたり、積極的に発言したりする社員が出てきます。朝礼の場で全体に発言することは、客先で話すのを想定した訓練になりますし、自信も持ってもらえるでしょう。

4 事務連絡は意外と浸透している

最後に補足します。特にオンラインでの朝礼になると、事務連絡がきちんと伝わっているか不安になるという意見があります。しかし、手順の変更、仕事の締め切り、ミーティングの日時などといった事務連絡は、意外と浸透しているものです。なぜなら、こうした内容は聞き逃すと仕事に支障が出るものであるため、社員もしっかり聞くのです。面白い/つまらないという評価は関係のない内容ということです。朝礼で聞き逃してしまった社員がいても、同僚に確認してキャッチアップしています。

ただし、例えば「手順の変更」がされるのには理由があり、そちらのほうが大切だったりします。変更された手順は選択肢の1つにすぎず、背景を理解していれば別のアイデアも出てきて、業務が改善されていきます。この背景に耳を傾けてもらうには、やはり伝える力が重要になってきます。

以上(2022年9月)

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画像:unsplash

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