書いてあること

  • 主な読者:部下から仲人を頼まれた経営者、上司
  • 課題:引き受けるに当たり、役割や心構えを知りたい
  • 解決策:結納から会場のセッティング、スピーチまで役割は多岐に渡るので、段階ごとに役割を把握する

1 仲人の役割

現在では、仲人を立てて結婚するカップルは少なくなっているようですが、経営者は立場的に仲人を頼まれることもあるでしょう。

本稿では、仲人を務めるためには、何に気を配り、どのような「役割」を果たせばよいのかを中心に紹介します。

なお、本稿では、結納や結婚式での礼儀作法に関する事柄については割愛しています。

2 仲人を引き受ける前に考えておきたいこと

1)仲人に必要な心構え

仲人とは、本来、お見合いから結婚式・披露宴にまで関与して結婚の仲立ちを務める存在を指します。仲人は、結婚に深く関わる存在であり、結婚する当人たちの双方、少なくとも片方をよく知っている必要があります。

また、結婚式・披露宴のほとんどは円満に進むとはいえ、当日に至るまでに意見の食い違いやトラブルが発生しないとも限りません。また、結婚後もトラブルがあると、仲人は当人たちや親から相談される可能性があるでしょう。

従って、仲人を引き受ける際は、「当人たちをよく知っていること」「親を説得してでも、結婚する当人たちの意見を尊重できること」「婚約解消という事態にも冷静に対処できること」などの心構えを持っておく必要があります。

2)婚約解消などのトラブルへの対処も必要

仮に婚約解消などのトラブルが発生した場合、仲人には、断られた側を気遣いながらも、冷静にしかるべき「事後処理」を行う役目があります。

婚約解消が法的に認められるのは、「相手が著しく経歴を偽っていた」「婚約中に相手が他の異性と関係した」「相手からひどい侮辱、虐待を受けた」「相手が再起不能の傷病を負って、正常な結婚生活ができなくなった」などとされています。

婚約解消を希望しているのであれば、仲人は当人や親と相談しながら、話し合いを進めることになります。婚約解消の場合、「婚約披露に要した費用」「結婚の準備に使った費用」「結婚のために職場を辞めた場合の損害」「婚約解消によるショックで病気になった場合の治療費や精神的苦痛に対する慰謝料」などが必要になる場合があります。

婚約解消は繊細なトラブルであり、かつ金銭の損害などが生じる場合は、話がこじれることも想定されます。弁護士に相談するなどして、対応するとよいでしょう。

また、婚約解消にともない、「これまで互いに交換した結納品、結納金、家族書、履歴書、写真、プレゼントなどを返却し合う」「関係者へ婚約解消の旨を連絡する」などの事後処理も必要になります。

3 仲人に求められる「役割」

1)仲人に求められる役割

結納の儀、そして、結婚式会場のセッティングまで、無事、結婚式を迎えるまでに仲人が果たすべき仕事は、「調整役」「アドバイス役」などと決して少なくありません。ここではそれらを、各段階に分けて紹介します。

2)結納の儀

結納とは、正式には、仲人が両家の使者として双方の家を往復し、互いの結納品を送り届けるものです。しかし、現在は両家が一カ所に集まって結納品を取り交わす略式が一般的であり、結納そのものを行わない場合もあります。

1.結納に関する調整事項

「結納品」は地方によって差があるので、両家の出身地のしきたりに応じて調整する必要があります。「結納金」については、女性側に嫁入り支度に必要な費用を確認した上で、男性側に伝えて額を決定するのが妥当といえるでしょう。

次に、結納の儀のときに取り交わす「家族書・親族書」については、特に、親族書はどの程度の親族まで記載するか、両家と打ち合わせをして決めます。さらに、当日の「服装」については、両家の意向を確認した上で仲人夫妻もそれに準じた装いをします。

2.結納品

結納品は、次の9品目が一般的とされていますが、5品目、7品目の場合もあります。なお、地方によっても結納品は異なります。

  • 目録:結納品とその数量を箇条書きにしたもの
  • 長熨斗(ながのし):あわびを長く伸ばしたもの
  • 金(宝)包:結納金
  • 末広(すえひろ):白無垢の扇子
  • 友白髪(ともしらが):麻ひも
  • 子生婦(こんぶ):昆布
  • 寿留女(するめ):するめ
  • 勝男武士(かつおぶし):鰹ぶし
  • 家内喜多留(やなぎだる):清酒を入れた樽ですが、一般的には樽料としてお金を包みます

さらに、結納の儀では「結納品の並べ方」「結納受渡の作法」「仲人口上」などの作法を覚えることも重要になります。

なお、キリスト教の場合、結納の代わりに「婚約式」を行う場合もあります。作法その他については、事前に神父や牧師が細かく教えてくれるので、心配ないでしょう。

3)挙式への準備期間

1.結婚式・披露宴の費用分担

結婚式の挙式の方法や披露宴の規模などは、両家の資産や社会的立場によって意見に食い違いが出やすいところです。仲人としてはよく話し合って、双方にとって納得のいく最善の妥協点を見つけて調整をする必要があります。

2.招待客のバランス

招待客の顔ぶれや、人数の割り振りも、仲人が間に立って調整します。一般的には、両家同数にそろえるのが理想です。

3.式場側との打ち合わせ

当人たちに任せてもよいのですが、同行を求められれば行ったほうがよいでしょう。その場合、式場の「責任者」や「係員」とできるだけ親しくなって良い関係をつくっておくとよいでしょう。

また、挙式から披露宴までを取り仕切る「世話役」、披露宴会場の「受付係」、来賓を控室にお通しする「案内係」などのスタッフとの顔合わせをして、披露宴の進行について、きめの細かい打ち合わせをしておきます。

最後に忘れてはならないのは、急病などにより、式に参加できなくなったときのために、「代わりの媒酌人(仲人)の手配」まで行っておくことです。

4)挙式および披露宴

1.挙式

神前の場合、事前の打ち合わせによって、誓詞(せいし)の奏上や玉串奉奠(たまぐしほうでん)を新郎新婦に代わって仲人が行うことがあります。その他の場合は、神主や僧侶、あるいは神父や牧師から、何をすればよいか当日詳しく説明があります。

2.挙式後の両家親族紹介

挙式後一堂に会した両家親族の紹介役を務めます。あらかじめ、親族についての基本知識と新郎新婦との関係を頭に入れておかなければなりません。

3.来賓の出迎え

会場入り口で来賓への応対あいさつを行います。両家を代表する一人として、風格のある態度、上品な身のこなしが望まれるところです。

4.媒酌人(仲人)のスピーチ

式の冒頭で述べられる媒酌人(仲人)のスピーチは、式の雰囲気を盛り上げる基盤づくりを行う上で重要な役割を担っています。

5.新郎新婦の介添

新郎新婦のお色直しの際には、媒酌人(仲人)夫妻が同行します。特に、媒酌人(仲人)は花嫁の介添人として、お色直しの合間を縫って口にできそうな飲み物や簡単な軽食を用意する、移動の際に衣装を踏んだり、つまずいたりしないよう、階段を下りる際には、1段先に降りて花嫁の手をとって誘導するなどの点に配慮しましょう。

6.来賓の見送り

大役をほぼ終えて、疲れが顔に出やすいところですが、最後まで笑顔を忘れず、来賓一人ひとりに心のこもったお礼の言葉を述べます。

4 媒酌人(仲人)のスピーチ参考事例

1.参列者へのお礼

本日は○○、▲▲ご両家の結婚披露宴にご列席賜りまして、誠に有難うございます。

2.媒酌人としての自己紹介

私はご両家の媒酌を務めることになりました●●でございますが、ふつつかながら一言あいさつを述べさせていただきます。

3.結婚式が済んだことの報告

まず、新郎新婦は先ほど神前において、結婚の儀を滞りなく挙げられましたことを、ここに慎んでご報告申し上げます。 

4.新郎新婦の紹介(両家紹介)

さて恒例によりまして、新郎新婦のご紹介をさせていただくことにいたします。

新郎の○○太郎君は、○○夫・○○子ご夫妻のご長男として、○○年、○県○市にお生まれになりました。○○大学をご卒業後、○○商事に入社され、現在海外営業部に勤務されています。海外営業の第一線でご活躍される前途有望な青年であります。また、ご覧の通りの体格で学生時代はボート部の主将を務めた経験もあり、周囲からの人望も厚い好青年です。

一方、新婦の○○子さんは、○○郎・○美ご夫妻の次女として、○○年、○県○市にお生まれになりました。○○音楽大学をご卒業後、現在はピアノの教師をなさっています。特に芸術の才能に優れていらっしゃる才媛で、ピアノ以外にフルートも演奏なさる他、作詞・作曲もなさいます。ご覧のように誠に相ふさわしいご良縁であると確信いたしまして、私ども夫婦は喜んでお二人の新生活のご出発をお手伝いさせていただいた次第でございます。

5.新郎新婦への今後の支援を願う言葉

若いお二人の新しい門出に当たりまして、媒酌人としてご列席の皆様に今後とも機会あるごとに、いろいろとご指導ご支援賜りますようにお願い申し上げて、媒酌人としてのごあいさつとさせていただきます。

以上(2020年3月)

pj10003
画像:photo-ac

Leave a comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です