書いてあること
- 主な読者:さらに成長するためのヒントが欲しい経営者
- 課題:自分の考え方をバージョンアップするためにもがいている
- 解決策:他の経営者の思考習慣も聞いてみる
1 「どうなりたいか」を常に考える
経営者は独自の視点と価値観を持って、ビジネスと向き合っています。そうした視点や価値観は、著名な経営者の言葉や、経営者仲間の姿勢から学ぶこともあれば、自身の経験の中で培われたものもあります。
経営者は企業経営において大きな権力を持ち、多くのことを自ら決めることができます。一方、経営者はビジネスから逃げることができません。こうした環境が、経営者ならではの「思考習慣」に結び付いていくのでしょう。
経営者にとって、自身の考え方は経営哲学とイコールであり、大切にしなければなりません。同時に、経営者が成長していくためには、これまでの考え方をバージョンアップする必要があります。
今回は、「『付き合わない』選択肢を持つ」「光あるところに人は集まる」「『信用』持ちにも慣れが必要」という3つを取り上げます。経営者が未来を見据える上で何らかのヒントになれば幸いです。
2 「付き合わない」選択肢を持つ
「ビジネスで最も面倒なのは『人』である」。多くの人が日々感じていることでしょう。AI(人工知能)とは違い、人には感情があります。しかし、感情を正確に言語化して伝えることは至難であり、意図していないすれ違いが生じたりします。
時には、ちょっとしたすれ違いが大きなトラブルに発展してしまうこともあるため、経営者はこれを避けるべく、社内外の関係者との接し方に常に気を配っています。低姿勢な経営者が多いのはこのためでもあります。
ただ、全ての人とうまくコミュニケーションが取れるわけではありません。ここでいうコミュニケーションとは、ビジネスを進める上で重要な“感覚の共有”です。重視する部分が同じだったり、スピード感が同じだったりという相性のようなものです。
もし、感覚が共有できない相手だと分かったら、それ以上、コミュニケーションに時間を割くのは考えものです。経営者は人とつながりながらビジネスを広げていくため、関係を続ける相手は慎重に選択する必要があるのです。
特にベンチャー界隈(かいわい)では、比較的簡単に経営者と経営者とがつながっているように感じます。しかし実際は、お互いがシビアに品定めをし、合格した者同士のコミュニケーションが続いているのです。
経営者は、相手と関係を続けるか否かの基準を持ちましょう。ダラダラと実のない関係を続ける人もいますが、これにはほとんど意味がありません。経営者は自分が大切にする価値観を再確認した上で、「付き合わない」選択肢を持つことも大切です。
3 光あるところに人は集まる
最近のビジネス関連のイベントでは、最後の30~60分を「ネットワーキング」の時間に充てることが多くなっています。いわゆる「懇親会」のことですが、ネットワーキングと言ったほうが、参加者に“つながり”を強く意識させることができます。
ネットワーキングに参加する人は、最初から“つながるモード”で接してきます。名刺交換した後、Facebook(フェイスブック)などのSNSで友達になり、その後、何度か会って話をすることもあります。
こうした活動は大事である一方、「浅い人脈持ち」にならないための注意が必要です。浅い人脈持ちは、「○○さんを知っています。××と言っていました」などと言います。しかし、当の○○さんは、その人のことなどとっくに忘れていることが少なくありません。
人と人とのつながりが、ネットワーキングから生まれるのはよくあることです。しかし、比較的簡単につながれるようになったからこそ選別の目は厳しくなり、“光を放つ人”でなければ、人は集まらず、また定着しません。
経営者の仕事の一つはネットワーキングであり、そこからビジネスに発展することもあります。一方、経営者は多くの人との出会いの中で自分を磨き、光を放って周囲の人を引きつける魅力を持たなければなりません。
浅い人脈しかなければ失格、多少の深い人脈があれば普通。そして、放っておいても自分の周囲に人が集まるようであれば“本物”です。ネットワーキングはFacebookの友達探しの場ではなく、自分に磨きをかける場であると認識することが大切です。
経験やスキルが自分と同等以下の人が集まる会合は居心地が良いかもしれませんが、自分を磨くことにはつながりにくいものです。自分よりも格上の人が集まる場に率先して顔を出したいものです。
4 「信用」持ちにも慣れが必要
「自分は評価されている」。真摯にビジネスと向き合っていれば、そう感じることもあるでしょう。「年上の経営者が何度も食事に誘ってくれる」「年下の経営者から『いろいろ教えてください』と言われる」などのケースは、まさにそうです。
人手不足、後継者不足の現在は、食事の場で相手の社長から「うちの会社の役員は未熟だ。うちに来てくれないか」「あと3年で引退する予定だ。その後を任せたい」などの相談を持ちかけられることもあります。
こうした良い評価は、本人が努力して築いた「信用」であり、大切にしたいものです。しかし、相手から深く信用されることに慣れていないと、相手が自分のどこを評価しているのかが分からず、立ち居振る舞いに戸惑うことがあります。
そして、「信用を失いたくない」と意識し始めると、不自然で弱気な(妙に下手に出た)立ち居振る舞いになってしまうことがあります。信用されることに慣れていない経営者が直面しがちな問題です。
このようなときは、言動の一貫性を保ち、決して嘘をつかないことを心掛けましょう。相手はそれまでの自分を評価してくれたのであり、背伸びをする必要はないのです。もし、分からないこと、できないことがあれば正直に伝えましょう。
経営者同士の信用はすぐには生まれません。逆に、一度信用が生まれれば、そう簡単には揺らぎません。こちらが引き受けられない頼まれ事であっても、一緒に解決策を模索していく過程で、さらに大きな信用を得られるものなのです。
以上(2019年4月)
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画像:unsplash