1 台所に欠かせない味噌
日本人の食事といえば、ご飯と味噌汁が欠かせません。味噌汁には味噌が必要ですが、この味噌は、材料やつくり方によってさまざまな種類があります。家庭によって味噌汁の味が違うのも、生まれ育った地域や環境によって、さまざまな味噌が使われているからでしょう。
この記事では、味噌についての豆知識を紹介します。
2 味噌の歴史
味噌の起源は中国大陸にあるといわれています。日本にいつ、どのように伝わったかは定かではありませんが、飛鳥時代には味噌の前身と考えられる「醤」があったとされます。「醤」という文字が日本で初めてみられるのは「大宝律令」(701年)で、「未醤」という文字が書かれており、これが「みしょう」→「みしょ」→「みそ」と変化していったといわれています。
以来、1000年以上の長きにわたり、味噌は日本人の食生活と深くかかわってきました。味噌は、当初は寺院や貴族階級に珍重されるぜいたく品でしたが、室町時代には裕福な庶民も自家醸造するようになったといわれています。江戸時代には味噌はなくてはならない食品となり、日本全国それぞれの地域で原料・気候・嗜好により、さまざまな味噌がつくられるようになりました。
3 味噌のつくり方・効能
味噌は蒸した大豆と米麹(こめこうじ)または麦麹などと食塩を混ぜ合わせ、6カ月から2年ほどかけて発酵・熟成させてつくります。大豆のたんぱく質が酵素で分解されて生命を維持するために不可欠なアミノ酸に変化し、それがうまみの元にもなるのです。
この他にも、発酵によってビタミンB群やビタミンEなど体に良い成分が生成され、栄養価は大変優れたものになっています。体への効能としては、抗酸化作用やコレステロール抑制作用が知られています。
気候風土、嗜好の違い、発酵条件なども地域ごとに異なることから、各地で土地の名を冠したさまざまな味噌がつくられています。味噌汁は、古来、日常食に欠かせない副食であると同時に、日本人の重要なたんぱく源でもありました。
4 味噌の種類
毎日、日本人が食べている味噌には、さまざまな種類があります。原材料による分類、味による分類、地区による分類、色による分類などがありますが、一番分かりやすいのは原材料による分類です。原材料別でみると味噌は、次のように分けられます。
- 米味噌
- 豆味噌
- 麦味噌
米味噌は基本的には、大豆と米麹と食塩でつくられています。米が日本の主要農作物だったこともあり、米味噌は今ではごく一般的になりました。大豆に米麹と食塩とを混合してつくる越後味噌、信州味噌、仙台味噌などの米味噌の生産量は日本の味噌の約80%を占め、全国的に利用されています。
豆味噌は大豆に香煎と豆麹を加えてつくった味噌で、主に中京地方を中心に生産されています。
麦味噌は、大豆に麦麹を使った味噌で、別名「田舎味噌」とも呼ばれ、中国、四国、九州地方で生産されています。
5 味噌を使うときの「コツ」
1)煮込み料理に適した豆味噌
味噌には、魚や肉などの食材の臭みや油分を吸着し、さらに味噌特有の香りを食材に移して料理の風味をよくしてくれる「マスキング効果」という機能があります。
通常、味噌は加熱しすぎると香りが飛んでしまいますが、豆味噌は煮込んでも香りの変化が少なく、食材への香りの吸着と油の乳化性に優れているといわれます。
豆味噌のこのような特性のおかげで、主な生産地である愛知県で、「味噌煮込みうどん」のような、よく煮込む味噌料理が発達したのかもしれません。
2)おいしい味噌汁を作るためには加熱がポイント
味噌汁を作る場合、味噌の濃い味と釣り合うように、だしはかつお節、煮干しなど好みの素材で濃いめにとったほうがよいでしょう。また、味噌の味や香りを生かすために、加熱の仕方に注意が必要です。
味噌汁を長く加熱すると、しっとりした舌ざわりが損なわれます。また、米味噌がたるの中で熟成されるとき、酵母が糖をアルコールやエステルなどの香り成分へ変化させていますが、このアルコールなどの香り成分は、90度以上になると揮発してしまいます。そのため、おいしい味噌汁を作るためには、味噌は最後に加え、入れた後は煮立てないことが肝要です。
3)味噌汁の味噌は少なめに
味噌汁に味噌を入れすぎたとき、水や湯で薄めると、だしの味ばかりでなく、味噌の風味も薄まってしまいます。初めは味噌を控えめに入れ、味見をして薄ければ味噌を追加するほうがよいでしょう。また、味噌汁を長く煮すぎたり、汁を温め直したりすると、味噌の香りが飛んでしまいます。余分に作らず、なるべく一回の人数分の味噌汁を用意し、食卓に出す直前に温めて味噌を入れ、沸騰直前に火を止めて香りのよい状態で食卓に出すことが大切です。
4)臭み消しの味噌は二度に分けて
煮物に使う味噌は、味噌汁と違って素材の引き立て役です。ですから、味噌を使った煮物は、味を染み込ませるためにも、臭いを取るためにも、加熱の初めに加えておく必要があります。しかし、せっかく使う味噌の香りも失いたくありません。そこで豚汁、鯉(こい)こくのように味噌で長く煮る汁ものや、肉や魚の煮込み料理は、初めに半量の味噌を入れ、ゆっくりと加熱して材料が十分に煮えたところで残りの半量を加え、香りが失われないうちに火を止めます。サバの味噌煮なども初めに味噌を加えて材料を煮含め、仕上げに酒やみりんで風味を出したほうがおいしく仕上がります。
以上(2023年9月)
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